2022 Fiscal Year Research-status Report
Development of a fully automated online simultaneous analysis method of steroid hormones and its application to metabolomics
Project/Area Number |
20K07007
|
Research Institution | Shujitsu University |
Principal Investigator |
片岡 洋行 就実大学, 薬学部, 教授 (80127555)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | ステロイドホルモン / 硫酸抱合体 / ストレス / バイオマーカー / オンライン自動分析 / 固相マイクロ抽出法 / LC-MS/MS分析 / 唾液 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和4年度は、ストレス応答ステロイドホルモン類とストレス関連バイオマーカーのインチューブ固相マイクロ抽出(IT-SPME)/LC-MS/MSによるオンライン自動分析法を開発し、客観的ストレス評価に活用した。 ストレスは様々な疾患発症の引き金となることから、ストレスに応答するコルチゾール(CRT)、テストステロン、デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)とその硫酸抱合体DHEASをIT-SPMEで濃縮し、ネガティブ/ポジティブイオンモードスイッチングLC-MS/MSと連結して同時分析する高感度オンライン自動分析システムを構築した。本法を非喫煙者及び喫煙者の唾液分析に応用したところ、タバコ煙曝露後CRT とDHEASレベルが低下してストレス軽減が認められたが、非喫煙者では曝露1時間後にこれらのレベルが増加に転じたことから、喫煙者では一時的ストレス抑制、非喫煙者ではストレス状態になることが分かった。 一方、ストレス関連バイオマーカーとして、CRTの他セロトニン、メラトニン、ドーパミン、オキシトシンをIT-SPME/LC-MS/MS法により一斉分析する高感度オンライン自動分析システムを構築した。本法を用いて、ハーブティーやアロママスクによるストレス緩和効果を調べた結果、カモミールティーやジャスミンティーで摂取前後にCRTレベルが減少し、ラベンダー及びベルガモット精油でCRTレベルが減少したことからストレス緩和効果が認められた。また、クレペリンテストなどによる精神的な急性ストレス負荷によりCRTレベルが上昇するが、これら物質はCRTレベルを低下させ緩和効果を持つことが分かった。他のバイオマーカーは個人差があり明確な効果は認められなかった。 以上より、開発した方法は選択的かつ高感度で非侵襲的に生体試料を分析できることから、ステロイドホルモン類によるストレス評価法としての有効性を確認した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
初年度に9種のステロイドホルモン類の一斉分析法を確立し、次年度には一部のステロイドホルモン類及び代謝物のIT-SPME/LC-MS/MS分析システムを構築して、ストレス評価に応用してきたが、当初予定していたメタボローム解析のためのこれらの化合物の網羅的解析は十分に行えていない。またプリカーサーイオンスキャンによる未知代謝物マーカーの検索、乳幼児からの尿・唾液採取を容易にするための乾燥ろ紙サンプリング法については検討できていない。コロナ禍の中で、標準試薬の海外からの調達や施設の利用が難しく、学生協力者の支援が得られず実験の進行が遅れ、また共同利用している老朽化したLC-MS/MS装置の調整に時間を要したことも原因である。LC-MS/MS装置は本研究に不可欠のものであり、20年近く使用している機器の更新が大きな課題であるが、高額な分析機器でもあり対応に苦慮している。 令和4年度は、利用できる標準物質を対象として、分析法の確立と生体試料分析への適用を中心に研究を進めてきたが、イオン化特性の異なるステロイドホルモン類と代謝物をポジティブ/ネガティブモードの切り替えで一斉に分析できる方法を開発し、微量の生体試料からストレス応答ステロイドホルモン類を分析してタバコ煙曝露とストレスとの関連性を解析するなど、興味ある研究成果が得られている。また、ストレス応答ステロイドホルモン類は、ハーブティーやアロマ精油などのストレス緩和因子の効果を解析する指標としても有効であるなど、バイオマーカー分析としての応用で興味深い研究成果も得られている。しかし、上記のような問題で、初期の目標が十分には達成されていないため、研究期間を延長し、ようやく海外から入手できた標準試薬を用いて網羅的一斉分析法の開発から、未知代謝物マーカーを検索するノンターゲットメタボロミクスを進めているところある。
|
Strategy for Future Research Activity |
ステロイドホルモン類とそれらの代謝物をIT-SPME/LC-MS/MS法により、簡便迅速かつ高感度に分析できることがわかったので、今後はこの手法を利用して、ステロイドホルモン代謝物の種類を増やして一斉分析する方法を確立するとともに、スペクトル解析からこれらの化合物に共通するフラグメントイオンを検索して、プリカーサーイオンスキャンやプロダクトイオンスキャンによる未知代謝物のスクリーニング法を検討する。これらの成果から、ステロイド代謝変化を網羅的に解析するためのプロファイルを作成して、メタボロミクスの足掛かりをつける予定である。また、これらの手法を利用した乾燥ろ紙サンプリング法についても検討する。さらに、研究が順調に進めば、当初予定していた合成ステロイド剤や食品中のステロイド関連化合物がステロイド代謝に与える影響についても、ディファレンシャル解析や様々な代謝物をマーカーとした多変量解析にしていきたい。なお、分析機器が使えなくなることは死活問題であり、研究を推進する上で最も難題となっているLC-MS/MS装置の更新については、粘り強く大学にも交渉していきたい。 本研究の成果は、随時関連の学会で発表するとともに、いくつかの研究成果は論文投稿して掲載されているが、さらに本年度が最終年度に当たることから、これまでの成果を取りまとめて論文を執筆し、インパクトのある国際的なジャーナルへ投稿する予定である。
|
Causes of Carryover |
研究代表者が外部評価委員など学内外の公務で多忙であったこと、LC-MS/MS装置が度々故障し修理や部品調達に時間を要したこと、COVID-19の影響で初年度から研究が遅れ気味になっていたことなどの理由により、最終年度までに当初の目的を達成することができないため、補助事業の期間延長を申請し承認を受けた。次年度使用額が生じた理由は、ステロイドホルモン類の標準品が海外にしかなく輸入に時間がかかったことと、LC-MS/MS装置が一定期間故障して修理までに時間を要したことにより、予定していた実験ができず次年度に繰り越す必要が生じたこと、またコロナ禍の影響で、学会発表はしたもののオンラインが多く、出張費の支出が少なかったためである。繰越額は、次年度予算と合わせて、試薬購入費、機器の修理費、論文校正、論文のオープンアクセスへの費用、研究発表のための出張経費など、計画的に使用する予定である。
|
Research Products
(15 results)