2020 Fiscal Year Research-status Report
分泌因子Neudesinの免疫抑制メカニズムの解明と新規がん免疫療法の開発
Project/Area Number |
20K07025
|
Research Institution | Kobe Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
増田 有紀 神戸薬科大学, 薬学部, 講師 (40421284)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小西 守周 神戸薬科大学, 薬学部, 教授 (00322165)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | がん免疫 / 樹状細胞 / CD8 T細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、Neudesinによるがん免疫抑制メカニズムの解明を目的とし研究を行った。 まず、Neudesinノックアウト(KO)マウスで観察された腫瘍成長抑制に、どの免疫細胞が寄与するかを検証した。CD4、CD8を中和抗体で、抗原提示細胞(食細胞)をクロドロン酸リポソームを用いて除去した野生型(WT)またはNeudesin KOマウスに、B16メラノーマ細胞を皮下接種した場合の腫瘍の成長を比較検討した。その結果、KOマウスでみられた腫瘍抑制効果は、CD4 T細胞を除去しても大きく変化はなかったが、CD8 Tまたは抗原提示細胞を除去した時に消失した。以上より、Neudesinによるがん成長抑制作用には、CD8 T細胞と抗原提示細胞が重要な役割を果たすことがわかった。 これまでの研究より、Neudesinはマクロファージに対して直接的な阻害作用を示すことが示唆されている。そこで、Neudesinによる抑制メカニズムを詳細に検討するために、がん免疫において重要な抗原提示細胞である樹状細胞を用いて検討した。KOマウスの樹状細胞はWTと比較して、LPS刺激により細胞表面活性化マーカー(MHC, CD80, CD86)および細胞性免疫誘導サイトカインであるIL-12p70産生が有意に増加した。また、Neudesin添加によりKOマウス由来樹状細胞における上昇が有意に抑制された。一方で、NeudesinはCD4またはCD8 T細胞に対するCD3/CD28抗体刺激による細胞増殖とIFN-γ産生に影響を与えなかった。以上より、Neudesinは樹状細胞の機能を阻害することで、T細胞免疫応答を抑制すると考えられる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、Neudesinのがん免疫抑制メカニズムを明らかにした。本年度の結果は、これまでの研究成果を裏付け、発展させるものであった。したがって、進捗状況としてはおおむね順調に進呈していると考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度の結果より、樹状細胞の機能はNeudesin KOマウスで野生型と比べて上昇し、Neudesinタンパク質の添加で抑制された。今後は、Neudesinの樹状細胞に対する抑制メカニズムについて、細胞内シグナルを中心に解析する。 一方、これまでの結果から宿主由来のNeudesinが腫瘍成長に重要であることが示されている。しかし、NeudesinはB16メラノーマを含む様々ながん細胞で発現しており、がん細胞由来のNeudesinの影響を排除する必要がある。そこで、肺転移性乳がんを自然発症するMMTV-PyVTトランスジェニックマウスとNeudesinノックアウトマウスを交配し、Neudesin-/- MMTV-PyVTマウスを作成し、がんの発症と進展におけるNeudesinの役割を検討する予定である。
|