2020 Fiscal Year Research-status Report
The possibility of cancer therapy targeting to cellular iron metabolism
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20K07036
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
宮沢 正樹 東海大学, 健康学部, 講師 (10554818)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平林 健一 東海大学, 医学部, 准教授 (60514388)
服部 鮎奈 京都大学, ウイルス・再生医科学研究所, 准教授 (60820420)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | がん / 鉄代謝 / 抗がん剤 / シスプラチン |
Outline of Annual Research Achievements |
鉄は酸素の運搬をはじめ、細胞分裂やDNAの複製など生体・細胞の恒常性維持に必要不可欠なミネラルでありエネルギーの産生などに関わるタンパク質群の重要な機能性分子である。申請者はこれまでに抗がん剤であるシスプラチンがDNAへの結合による複製阻害とは独立して、細胞内の鉄の欠乏によってもがんの細胞死を誘導することを明らかした。本課題はそれらの研究をさらに発展させ、鉄の欠乏によるがん細胞死の分子メカニズムの解明を行い、鉄代謝制御系を標的とした抗がん剤の開発を目指すものである。2020年度は当初の計画通りヒト腫瘍組織における鉄代謝制御因子の免疫組織染色を行った。その結果、鉄のマスターレギュレーターであるIRPタンパク質が膵がんの一部の症例で高いことを明らかにした。現在、鉄濃度の測定やがんのグレード、予後との関連を解析している。また、各種がん細胞における鉄制御因子のノックダウン解析を進めており、それによる遺伝子発現パターンの変化をRNA-seq法により詳細に明らかにするための準備を行なっている。 アメリカ国立衛生研究所などが実施した大規模なコホート調査によると、食事による鉄分の摂取量と様々ながんの発生率が正の相関を示している。そのため申請者は、この発がんのリスクファクターとなる過剰な鉄を遺伝子レベルで下方制御し、がん治療へ応用することを目標に2021年度も予定されている研究を遂行し実用可能ながんの治療法の確立を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナ感染症の影響により半年ほど研究が遅延したが、その後は予定されている研究計画に沿って概ね順調に結果を取得することができている。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は腫瘍組織における鉄代謝制御因子の免疫組織染色を行い、データ数を増やす予定である。また、株化細胞を用いた培養細胞系では明らかにできない「鉄と関連するヒト腫瘍組織の種類や悪性度、鉄制御タンパク質、鉄沈着度との相関関係」を統計学的に解析し、鉄の蓄積が治療や予後予測の因子となりえるか検討する。さらに申請者は、細胞内の鉄の欠乏によってがん細胞死が誘導されることをすでに証明している。しかしながら、その細胞死がどのような分子メカニズムで誘導されているかは未解明のままである。そこで本課題では、鉄制御因子の阻害により変化する遺伝子群をRNA-seq法により網羅的に解析し、その全容解明を行う。
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Causes of Carryover |
コロナ感染症による研究機関の入構制限などがあり、実験に遅延が生じたため一部費用を次年度へと繰り越した。使用目的としては、免疫組織染色における試薬および抗体等の消耗品の購入を予定している。
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