2020 Fiscal Year Research-status Report
天然化合物AusDに高い感受性を示すがん細胞の分子遺伝学的特徴の解明
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20K07037
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
定家 真人 東京理科大学, 理工学部応用生物科学科, 准教授 (70415173)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | がん / 天然化合物 / クロマチン / バイオマーカー / 骨肉腫 |
Outline of Annual Research Achievements |
カビ由来の天然化合物AusDは、正常細胞への毒性は低く一部のがん細胞に選択的な毒性を示すため、個別化医療に利用できる新規抗がん薬の種となる可能性がある。一方でAusDによる細胞増殖抑制の分子機序の詳細や、AusDに高感受性を示すがんに共通するバイオマーカーは明らかにされていない。応募者らはこれまでの研究で骨肉腫由来の細胞株の一つのグループに対し高い毒性を示す化合物としてAusDを単離した。本研究ではがん細胞のAusD高感受性を決定づける遺伝的背景や遺伝子発現の特徴を見出し、AusDによる細胞増殖抑制の分子機序を明らかにすることを目的とする。本研究計画ではがん細胞のAusD高感受性と相関する遺伝的背景や遺伝子発現変化(バイオマーカー)の網羅的な探索を行い、AusD高感受性の決定に関わる遺伝子を同定する。また、AusDの細胞増殖抑制の分子機序を調べたうえで、バイオマーカーとなる特徴がAusD高感受性にどう関わるかを調べる。本研究の成果により新しい治療対象を有する抗がん薬としてAusDを提案できる可能性があり、学術的のみならず医学的・薬学的にも意義深いものになることが期待される。 本年度は、研究実施計画にしたがい、AusDによる増殖阻害を受けやすいがん細胞で発現が亢進する遺伝子を探索し、CYP2J2を見出した。次に、AusDによる細胞増殖抑制にCYP2J2が必要かどうかを知るため、CYP2J2の過剰発現や発現抑制により、細胞のAusD感受性が変化するかどうか調べた。その結果、CYP2J2の過剰発現によりAusDの感受性が増し、発現抑制により感受性が緩和された。これらの結果から、AusDが示す細胞毒性にはCYP2J2が必要であることが明らかにされた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はまず、ヒト骨肉腫由来細胞株6株とヒト肺由来正常線維芽細胞について、AusD処理後の生存率を調べたところ、骨肉腫由来3株が、他の細胞に比べてAusD高感受性を示すことがわかった。 AusDは、細胞内でシトクロムP450(CYP)によりエポキシ化され、DNAのグアニンと共有結合を形成することでDNA損傷を誘導すると考えられている。AusD高感受性を示す細胞株で発現レベルの高いCYPを探索する目的で、様々な臓器のがんに由来する細胞株39株から成るヒトがん細胞パネルにAusDを作用させ、それらのAusD感受性を調べた。本39細胞株ではすでに全遺伝子の発現パターンが明らかにされているため、AusD高感受性を示す細胞株でどの遺伝子の発現レベルが高いかを調べることができる。この実験の結果、AusD感受性の高さは、CYP2J2の発現レベルの高さと正相関することがわかった。次に、初めに調べた骨肉腫細胞株6株でのCYP2J2発現レベルを調べるため、RT-qPCRによりmRNA量を調べたところ、AusDに対し高感受性を示した3株では、CYP2J2のmRNAの量が多いことがわかった。 AusD高感受性を示す細胞ではCYP2J2の発現量が亢進していることが確認されたため、CYP2J2の発現量を増減させて、AusD感受性が変化するかを調べた。まずは、AusDに対し感受性の低い細胞でCYP2J2を過剰発現させたところ、AusD感受性が高まった。逆に、AusDに対し感受性の高い細胞でCYP2J2のshRNAを発現させノックダウンしたところ、AusD高感受性が緩和された。これらの結果から、AusDが示す細胞毒性にはCYP2J2が必要であることが明らかにされた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究で、CYP2J2発現量レベルが高い株がAusD高感受性を示すことを明らかにしたが、その一般性を確認するため、今後は、新たに入手した骨肉腫由来細胞株6株について、RT-qPCRによりCYP2J2のmRNA量を測定し、AusD高感受性の程度との相関性を調べる。さらに、本12株の転写産物をRNAシーケンシングにより解析し、CYP2J2高発現に関わる転写ネットワークや、AusD感受性およびCYP2J2発現量の違いと相関する遺伝子発現変化や、遺伝子変異、転写産物の構造変化の有無を明らかにする。 一方で、申請者らはこれまでにCRISPR-Cas9システムを利用した遺伝学的スクリーニングを行い、AusDが示す細胞増殖阻害活性に関わる因子の網羅的探索を行った。本スクリーニングでは、CYP2J2の活性制御に関わる因子や、転写制御に関わる因子が同定された。これらの因子と上記トランスクリプトーム解析の結果を総合して、細胞のAusD高感受性とCYP2J2の高発現の関係性を総合的に理解する。 また、骨肉腫細胞株または骨肉腫臨床検体にどれくらいの割合でCYP2J2発現レベルの高いものが存在するか調べるため、公開されているトランスクリプトームのデータ(細胞株や臨床検体)を解析する。
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Research Products
(2 results)