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2020 Fiscal Year Research-status Report

発がん初期に関わるヒストン修飾酵素の機能解明と創薬への基盤研究

Research Project

Project/Area Number 20K07042
Research InstitutionDaiichi University, College of Pharmaceutical Sciences

Principal Investigator

長田 茂宏  第一薬科大学, 薬学部, 教授 (40263305)

Project Period (FY) 2020-04-01 – 2023-03-31
Keywordsヒストン / メチル化酵素 / エピジェネティクス
Outline of Annual Research Achievements

がんは現在でも日本人の死亡原因第一位であり、進行がんの多くは予後不良である。その原因のひとつに浸潤、転移があり、その分子機構解明、新たな抗がん剤の開発および有効な利用法が課題とされている。発がんおよびがんの悪性化は遺伝子の変異だけではなく、ヒストンタンパク質とクロマチンを形成するDNAの塩基配列変化を伴わないエピジェネティクス異常により、分裂した細胞に異常な遺伝子発現調節が維持されることにもよる。しかし、浸潤、転移におけるエピジェネティクス制御は不明な点が多く残されている。
肝化学発がん初期に発現変化するヒストン修飾因子などのクロマチン上の反応に関わる因子を複数同定しており、それらの機能解析を進めている。今年度は、遺伝子発現制御などに関わるヒストンメチル化酵素CARM1のスプライシングバリアントの機能解析およびCARM1阻害剤の既存の抗がん剤に対する影響を検討した。
CARM1には複数のスプライシングバリアントの存在が報告されているが、多くの論文は全長、もしくは区別なく解析が進められている。一部のがんで発現割合が高い可能性が示されているスプライシングバリアントCARM1.v4と全長CARM1.v1の低酸素模倣状態における役割の比較を行った。
CARM1のメチル化酵素活性の阻害が抗がん活性につながることから、CARM1阻害剤の開発が進められている。抗がん剤は一般に併用されることから、肝がんに用いられる既存の抗がん剤などとCARM1阻害剤の併用ががん細胞増殖に与える影響も併せて検討した。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

3: Progress in research has been slightly delayed.

Reason

ヒストンタンパク質や転写共役因子などのアルギニン残基を非対称にメチル化するアルギニンメチル化酵素CARM1には複数のスプライシングバリアントの存在が報告されている。そのうちのひとつであるエキソン15を欠くCARM1.v4はある種のがんでその割合、発現量ともに増加することが示されている。がん細胞が増殖する微小環境においては、低酸素状態などの特殊な環境になる。全長であるCARM1.v1およびスプライシングバリアントCARM1.v4が低酸素状態におけるがん細胞の増殖に与える影響を検討した。通常酸素濃度状態では、低酸素誘導性因子(hypoxia-inducible factor、HIF)-1αはプロテアソーム系により分解されるが、低酸素状態では、HIF-1αが誘導されることにより、その環境に適応が可能になる。塩化コバルト添加によりHIF-1αが誘導される低酸素模倣状態において、CARM1の二つのスプライシングバリアントがHIF-1α発現に与える影響は異なっていた。同様に細胞増殖に与える影響もバリアント間で違いが生じる傾向が得られた。
CARM1は様々ながんにおいて発現の上昇が観察され、いくつかの細胞においてはがん細胞増殖促進に働くことなどから、がん化に対して促進に働く因子として考えられ、その阻害剤の開発が進められている。抗がん剤は併用して用いられることから、分子標的薬との併用効果を検討した。その結果、肝がんで用いられるマルチキナーゼ阻害剤であるソラフェニブの細胞増殖抑制効果を強める傾向が観察された。その一方で、MEK阻害剤に対しては、作用を増加させる傾向はほとんど観察されなかった。

Strategy for Future Research Activity

低酸素状態におけるHIF-1α発現、細胞増殖に与える影響がCARM1バリアントで違いがある可能性が示された。異なる発現系においても、同じ傾向が得られるかについて解析を進め、バリアントそれぞれの役割を明らかにする。
エキソン15には酵素が認識する基質コンセンサス配列が含まれることから、その酵素による修飾が関係するかについて、点変異体を用いた解析を行う。点変異体を用いた解析により、その酵素の関わりが予想される際は、その酵素活性制御にかかわるシグナル伝達がHIF-1αの安定性、低酸素状態における細胞増殖に与える影響について解析する。
CARM1阻害剤が与える影響については、ほかの分子標的薬についても併せて検討する。また、細胞種特異性についても併せて検討する。ソラフェニブなど、併用による影響が観察された分子標的薬についてはそのシグナル伝達系に与える影響を検討し、併用による影響の分子機構を明らかにする。がん細胞は三次元的に増殖することから、通常の細胞培養上のプレートと抗がん剤感受性が異なる可能性も考慮する必要がある。そこで、低接着状態における三次元培養下における感受性を検討する。

Causes of Carryover

新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、緊急事態宣言が発出され、研究が遂行できない期間がありました。その期間の研究計画が遅れ、消耗品利用が若干減りました。次年度以降の研究を有効なキットなどを利用することにより、さらに効率的に研究を遂行する予定です。

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Published: 2021-12-27  

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