2020 Fiscal Year Research-status Report
抑制性分子CD72の樹状細胞疲弊における役割の解明
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20K07048
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
赤津 ちづる 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 助教 (60735984)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 免疫学 / 樹状細胞 / CD72 / 慢性感染症 |
Outline of Annual Research Achievements |
プラズマ細胞様樹状細胞(pDC)は、ウイルス感染時などに、抗ウイルス作用を持つサイトカイン、I型IFNを産生し感染免疫を担うが、慢性感染症では「pDC疲弊」が起こりI型IFNの産生が低下する。我々は最近、主にB細胞上に発現する抑制性分子CD72が、樹状細胞(DC)上において、DCの活性化に伴って発現誘導することを見出した。免疫細胞の活性化に伴い抑制性分子が発現誘導される現象は活性化T細胞上に発現誘導されるPD-1分子が知られ、PD-1は、担がん状態でのT細胞の持続的な活性化に伴いT細胞機能が減弱するT細胞疲弊に関わる。本研究では、PD-1がT細胞疲弊を引き起こすのと同様に、CD72がpDC疲弊を引き起こし、感染の持続化を司る分子本体であると仮説を立て、これを検証することを目的とした。まず、慢性感染症モデルマウスの樹立を試みた。持続感染を引き起こすことが知られるLCMV (Lymphocytic Choriomeningitis Virus) clone 13株を野生型マウスに感染させることにより、慢性感染症モデルマウスの樹立を行った。ウイルスの力価や感染経路の条件設定を行い2x10^6 pfuのウイルスを腹腔内投与により感染させた場合に、1か月間程度の持続感染が安定して成立する系を樹立できた。また、ウイルス感染は感染後の血中ウイルス力価、体重減少、およびI型IFNの産生を指標に評価したが、I型IFNの測定はレポーター細胞を用いたアッセイ系によりELISA法よりも高感度に検出できる系を確立することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上述した通り、LCMVを感染させた慢性感染症モデルマウスの作製法を樹立でき、ウイルス感染を評価するための血中ウイルス力価の測定方法とI型IFNのアッセイ系とを樹立できた。さらに、CD72欠損マウスコロニーが樹立でき、B細胞およびDCで特異的にCD72を欠損するマウスコロニーも樹立できつつあり、次年度以降研究を遂行する材料がほぼそろってきた。したがって、おおむね順調であるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度樹立した方法で、野生型およびCD72欠損マウスを用いて慢性感染症モデルを作製し、体重減少、血中ウイルス力価およびI型IFNを比較することで、CD72欠損マウスにおいてDCの疲弊が解除されて感染症状の緩和が見られるかを検証する。
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Causes of Carryover |
2020年度から3年間の研究計画で研究を遂行しているため。次年度も引き続き、CD72欠損マウスを用いた慢性感染症モデルの解析等を遂行するための一般試薬や実験マウスなどの購入費や実験動物施設の使用料等にあてる。
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