2021 Fiscal Year Research-status Report
2型糖尿病増悪化を防ぐジアシルグリセロールキナーゼδによる骨格筋形成制御機構
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20K07049
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
堺 弘道 島根大学, 学術研究院医学・看護学系, 助教 (00375255)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 2型糖尿病 / ジアシルグリセロールキナーゼ / 骨格筋形成 / ミリスチン酸 / β-tubulin |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞レベルで筋分化を正に制御するジアシルグリセロールキナーゼδ(DGKδ)の骨格筋特異的欠損マウスを作製するために,LoxP-floxed DGKδマウスとMyf5-Creマウスを前年度までに導入した.本年度においては,各マウスのバックグランドを揃えるために,C57BL/6Jを用いて戻し交配を行い,それぞれのマウスを交配させることで,骨格筋特異的DGKδ欠損マウスの作製を試みた. 一方で,DGKδの骨格筋形成における役割をさらに細胞レベルで解析するために,DGKδの発現を増加させるミリスチン酸をC2C12細胞に添加し,骨格筋形成への影響を評価した.その結果,C2C12筋芽細胞へのミリスチン酸添加により,筋分化初期の分化誘導を抑制することを前年度までに示したが,さらに,本年度においては,C2C12細胞の分化後期においては,ミリスチン酸は分化誘導を殆ど抑制せずに,逆に,骨格筋形成への関与が報告されているβ-tubulinの発現を増加させることがわかった.このβ-tubulinの発現増加は,筋分化初期及び筋芽細胞の増殖過程においては観察されなかったことから,筋分化後期に特異的であることがわかった.また,他の脂肪酸(ラウリン酸,パルミチン酸,オレイン酸)は筋分化後期のβ-tubulinの発現を増加させなかったことから,筋分化後期のβ-tubulinの発現はミリスチン酸選択的であることがわかった.さらに,筋分化後期におけるβ-tubulin発現増加は,DGKδ特異的siRNAにより抑制されたことから,DGKδ依存的であることが示された.これらの結果は,ヒト成人においては筋分化誘導そのものは殆どが終了していることから,ミリスチン酸によるDGKδ依存的なβ-tubulinの発現増加は,骨格筋の形成を促進させる可能性を示した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
DGKδの骨格筋形成における役割を解明するために,前年度導入したLoxP-floxed DGKδマウス及びMyf5-Creマウスのバックグランドを戻し交配により揃え,それぞれのマウスを交配させた.骨格筋特異的DGKδ欠損マウスは次年度早々に生まれる予定であり,順調に進展している.さらに,本年度は,DGKδの骨格筋形成における役割について細胞レベルでの解明も試みており,C2C12細胞の筋分化後期において,ミリスチン酸がDGKδ依存的にβ-tubulinの発現を増加させ,骨格筋形成を増大させる可能性を示した.従って,本研究課題はおおむね順調に進展していると判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
前年度導入したLoxP-floxed DGKδマウス及びMyf5-Creマウスを本年度は交配させ,次年度早々に骨格筋特異的DGKδ欠損マウスを得る予定であることから,今後,本マウスの解析を行っていく.具体的には,筋発生過程(胎児期)での筋分化マーカー(myogeninやmyosin heavy chain(MHC)など)の変化や形態異常を調べ,筋発生におけるDGKδの機能を解明する.さらに,成体マウスを用いて,トレッドミル等を用いた運動後の筋肥大や筋傷害からの再生への影響も同様にして明らかにする.さらに,ミリスチン酸はDGKδ依存的にβ-tubulinの発現を増加させることから,実際にマウスに投与したときに,骨格筋形成にどのように影響を与えるのかを評価する.
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Causes of Carryover |
本年度においては,骨格筋特異的DGKδ欠損マウス作成のために,LoxP-floxed DGKδマウスとMyf5-Creマウスとを交配させたが,本マウスは次年度生まれてくる予定であるため,予定していた解析を次年度に行う計画とした.従って,差額が生じたが,生じた差額分は次年度に予定している解析に使用する.
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Research Products
(6 results)