2021 Fiscal Year Research-status Report
Development of anticancer drugs based on a new oncogenic mechanism of a novel oncogene candidate molecule TRB1
Project/Area Number |
20K07052
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
林 秀敏 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(薬学), 教授 (80198853)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | TRB1 / c-Myc / クロストーク / MAX / 遺伝子増幅 / 8q24 / p21 / LSD1 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒトTRB1遺伝子は染色体8q24.13領域に位置し、そのごく近傍の8q24.21領域にはがん原遺伝子c-Mycが位置している。TRB1とc-Mycはともにがんの悪性化を促し、がん化に伴うエネルギー物質の代謝リプログラミング作用など機能類似性が見出されている。さらに、AMLや前立腺がん、大腸癌の一部などでは染色体8q24領域の増幅が報告され、腫瘍の形成や悪性化と連関することが示唆されている。また、c-MycとTRB1とが共増幅する場合も知られている。そこで、TRB1の新たな発がんメカニズムを検証するため、c-Mycとのクロストークについて解析を進めた。 c-Mycは様々な遺伝子の転写を正にも負にも制御することが知られている。c-Myc応答領域を含むプロモーター依存的なレポーターアッセイにより、正に制御するLSD1(lysine specific demethylase 1)の転写はTRB1によって増強し、負に制御するp21の転写をTRB1はさらに抑制することを明らかにした。また、c-Mycの標的遺伝子のmRNAレベルの発現においても同様の結果が得られた。 次に、プルダウンアッセイにより細胞内での両者の相互作用も確認することができた。c-Mycの正の転写活性はMAXと呼ばれるパートナーとヘテロ二量体を形成することで誘起されるが、TRB1はこのc-Myc-MAXの結合を増強した。 さらに、TRB1をノックダウンしたところ、c-Mycの発現がmRNA、タンパクレベルで低下するとともに、c-Mycの標的遺伝子のmRNAレベルも低下し、これはc-Mycの過剰発現で一部レスキューできることが明らかとなった。 以上のことからTRB1はc-Mycの発現、そしてその活性を増強することで、がんの悪性度を高め、バイオマーカーとしての候補、もしくはがん治療における重要な標的となること可能性が考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和3年度も新型コロナウイルス感染症の拡大により、実験やディスカッションなどの実施、進行に多少影響はでたが、TRB1とc-Mycとクロストークの解析については、順調に進めることができた。また、本研究から、c-Mycによって誘導されたLSD1は、c-Mycと結合し、c-Mycタンパクを安定化させて、活性増強させるという正のフィードバック機構を形成していることも新たに見出している。TRB1はc-MycによるLSD1誘導を促進することから、これらの作用も亢進し、がんの発生、あるいは悪性化に関与しているものと推察される。
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Strategy for Future Research Activity |
今回、ゲノム上で近傍に位置し、いくつかのがんで遺伝子が共増幅されていることが知られているTRB1とc-Mycとのクロストークを明らかとし、癌遺伝子としてのc-Mycの作用をTRB1が増強させている可能性が強く示唆された。c-MycはTGF-beta刺激などと同様に、がん細胞のEMTを誘導する作用を有することも知られており、TRB1がc-Mycの活性増強を介して、転移・浸潤、あるいは抗がん剤抵抗性獲得に寄与している可能性も考えられ、そのメカニズムについても明らかにしていきたい。さらに、c-Mycはundruggableなタンパクとして知られ、c-Mycタンパクを直接標的とするような創薬アプローチは難航している。そこで、前年度のがん幹細胞維持機能の機能抑制とともに、間接的にc-Mycの活性を抑制する目的で、TRB1を標的としたアプローチを検討していきたい。
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Research Products
(20 results)