2021 Fiscal Year Research-status Report
活性メラニンによる炎症性腸疾患抑制メカニズムの解明
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20K07055
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Research Institution | Chubu University |
Principal Investigator |
川本 善之 中部大学, 生命健康科学部, 准教授 (10410664)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上野 有紀 愛知学院大学, 心身科学部, 准教授 (20388060)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | メラニン / 炎症性腸疾患 / イカスミ / IBD |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、若者を中心に炎症性腸疾患(IBD)が増加しており、原因究明と治療法の開発が求められている。IBDは最近の研究から、免疫細胞のマスト細胞と炎症性マクロファージが深く関与していることが示されている。我々は独自に合成した水溶解性メラニンが、マスト細胞とマクロファージの活性化をいずれも強く抑制することを見出している。水溶解性合成メラニンはある分子ユニットのランダムなポリマーと想定され、分子量が一定ではない。本研究では、マスト細胞やマクロファージを効果的に抑制する、分子量サイズを一定範囲に限定して調整したものを「活性メラニン」と定義し、IBDモデルに対してその効果を検証・実証するとともに、制御メカニズムを解明することを目的として、研究を進めている。 本年、デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)による潰瘍性大腸炎(UC)誘導を検討した。まず、培養細胞レベル、動物レベルにおいて活性メラニンの毒性評価やDSS誘導性UCの発症、悪化抑制効果の有無について検証を進めた。すなわち、ヒト結腸癌由来の細胞株Caco-2に対し、活性メラニンは顕著な細胞毒性を示さなかった(0.5mg/ml以下, 24h)。また、Balb/cマウスへ活性メラニンを2000mg/kg/dayで10日間連日経口ゾンデ投与したところ、体重変化や死亡といった明確な変化は確認されなかった。一方、マウスの大腿骨より骨髄細胞を採取し、M-CSF添加培地で培養して活性化したマクロファージに対してLPSを処理すると、マクロファージはCCL-8を発現するが、活性メラニンはその発現を有意に抑制することを確認した。その上で、2%DSSの自由摂取によるUCを誘導し、活性メラニンを、経口ゾンデを用いて投与した。その結果、UC誘導による大腸収縮を活性メラニンは有意に抑制することを見出した。現在、大腸組織の病理解析を進めているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
UCモデルにおいては当初、マウスへのDSS飲水投与を2.5%で検討したところ、陰性コントロールに比べて陽性コントロールでは有意な大腸長の退縮が見られたが、陽性コントロール群と比較して活性メラニン群では大腸長の退縮抑制傾向がみられたものの有意差を得るには至らなかった。そこで、DSS濃度を2%としたところ、陽性コントロール群と活性メラニン投与群間において有意差を得ることができた。病理組織解析では、HE染色によるリンパ球の浸潤やPAS染色による粘液染色を行い、活性メラニンによる大腸長退縮抑制効果を補完する結果を得つつあるが、炎症性マクロファージやマスト細胞、その他免疫系細胞の分布について詳細に検討を進める必要がある。なお、当初計画では当該年度に他のIBDモデルであるTNBS誘導性クローン病(CD)モデルを検証する予定であったが、UCモデルでの再検討を行ったため、次年度に行うこととなった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、潰瘍性大腸炎(UC)モデルの病理組織学的解析を進め、リンパ球浸潤、活性化マスト細胞の検出、炎症性単球の有無、制御性T細胞、M1/M2マクロファージの存在の有無等について病理的組織解析などについて詳細に調べる。また、他のIBDであるクローン病(CD)モデルを用い、合成した活性メラニンによる抑制効果の検証を行う。CDモデルでは、TNBSを単回経腸投与し、活性メラニンの連日投与による効果の検証・比較を行う予定である。解析項目として、体重、血便スコア、大腸長計測などを行う。また、メカニズムの解析には腸組織切片を作製し、UCモデルで解析した上記と同様の項目について、病理的組織解析を行う計画である。さらに、マウス骨髄細胞をM-CSFで刺激した初代培養細胞を用い、活性メラニンによるLPS炎症応答の抑制メカニズムを解明するため、RNAseqまたはDNAマイクロアレイ解析を予定している。加えて、特殊加工したイカスミを用いて、天然由来メラニンを用いた同様の検討を行う予定である。
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Causes of Carryover |
デキストラン硫酸ナトリウム誘導性IBDモデル(潰瘍性大腸炎、UCモデル)において、活性メラニンの有効性を検討したところ、精査するために再実験を行う必要があり、当該年度予定していたTNBS誘導性IBDモデル(クローン病、CDモデル)実験を行うことができなかったため、次年度使用額が生じた。次年度、UCモデルにおける詳細な病理組織解析を進めるとともにCDモデル実験を行い、当初計画である遺伝子レベルでの発現解析を進めていく。
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Research Products
(1 results)