2021 Fiscal Year Research-status Report
新規S1P輸送体MFSD2Bの創傷治癒における役割と活性制御機構の解明
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20K07059
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Research Institution | Setsunan University |
Principal Investigator |
小林 直木 摂南大学, 農学部, 助教 (90532250)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | リン酸化 / 創傷治癒 |
Outline of Annual Research Achievements |
赤血球と血小板はどちらもMFSD2Bを介してS1Pを細胞外へ放出するという点で共通しているが、赤血球からのS1P輸送が恒常的であり、血小板からのS1P輸送が細胞の活性化に依存する点で大きく異なっている。活性化した血小板から放出されるS1Pは、創傷部位において、血管新生・細胞増殖・細胞遊走などを促進すると考えられている。 赤血球・血小板におけるMFSD2Bの活性制御機構を明らかにするため、MFSD2Bのリン酸化に着目し、生化学的解析を行った。2020年度までに、スフィンゴシンキナーゼを発現するCHO細胞において、C末端に3xFLAGタグを融合したタンパク質(MFSD2B-C3FLAG)が、リン酸化されることを確認した。この際、抗FLAG抗体ビーズによる細胞溶解液からのMFSD2B-C3FLAGの精製において、抗FLAG抗体ビーズへの非特異的なタンパク質の吸着が見られたが、2021年度に精製条件を検討し、抗FLAG抗体ビーズの洗浄液に変性作用の大きい界面活性剤を使用することで、この非特異的吸着を解消することができた。また、MFSD2B において、タンパク質リン酸化酵素の標的となり得る33個のセリン・スレオニン残基をすべてアラニン残基へ置換したところ、S1P輸送活性は完全に消失し、リン酸化も全く見られないことが分かった。 さらに、創傷治癒過程におけるMFSD2Bの関与を明らかにするため、MFSD2B欠損マウス皮膚の創傷治癒速度についても解析した。14週齢の野生型およびMFSD2B欠損マウスにおいて、背部に円形の創傷を6ヶ所ずつ作製し、1日おきに創傷の直径を計測したところ、野生型およびMFSD2B欠損マウスの創傷治癒速度に有意な差は見られなかった。今後、創傷部位の病理学的解析についても行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染拡大による自宅待機のため、研究の進捗に遅れが生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
MFSD2Bへの1アミノ酸残基の変異導入により、S1P輸送活性に影響を与えるSer, Thr残基を特定し、タンパク質リン酸化や細胞内局在を解析する。マウスを用いた創傷治癒過程の解析については、創傷部位の病理学的解析を行う。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染拡大により、2021年度の研究期間が短縮されたことから、2021年度に予定していたMFSD2Bの簡便な活性測定系の確立を2022年度に行うため、その実験に必要となる消耗品の購入に使用する。
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