2020 Fiscal Year Research-status Report
メトトレキサートによる臓器障害を規定する薬物動態制御因子の薬理遺伝学的解析
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20K07063
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
鳴海 克哉 北海道大学, 薬学研究院, 助教 (90746752)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | メトトレキサート / アルデヒドオキシダーゼ |
Outline of Annual Research Achievements |
メトトレキサート (MTX) は癌やリウマチなど幅広い疾患に対して汎用される腎排泄型の薬剤であるが、その体内動態や副作用発現には個体差が存在する。MTXの体内動態には複数の膜輸送タンパク質が寄与しているが、近年MTX代謝に関わるアルデヒドオキシダーゼ (AOX) の重要性が示唆されている。本研究では、MTXによる副作用、特に臓器障害の個体差に焦点をあてその要因を明らかにするべく、MTX体内動態におけるAOX活性の臨床的意義を評価するとともに毒性発現機序の一つとしてAOXを含めた薬物動態制御因子の複合的な関与を明らかにすることを目的とする。はじめにヒト肝がん由来細胞株であるHepG2細胞を用いて、MTXの肝毒性に対する各薬物動態制御因子の寄与を評価した。肝臓においてMTX動態に寄与するmultidrug resistance associated proteins (MRPs)、breast cancer resistance protein (BCRP)およびAOXに着目し、これらの阻害剤およびsiRNAを用いてMTXの肝毒性に対する影響を評価した。MRPsおよびBCRP阻害剤はMTXによる細胞生存率の低下に対して有意な影響を及ぼさなかった。一方、AOX阻害剤ラロキシフェンにより、MTXによる細胞生存率の低下が増強する傾向を示した。また、siRNAを用いたAOXノックダウン条件下においてMTXによる細胞生存率の低下が増強することが示された。肝臓においてMTXはAOXを介してより毒性の低い7-ヒドロキメトトレキサート (7-OH-MTX) に代謝されることが知られている。以上の結果からMTX誘発性肝障害は、AOXの機能低下により増強される可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度はin vitroの検討に加えて、ヒトサンプルを用いたSNP解析を予定したが、倫理審査の承認に時間を要しており実施に至っていない。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はin vivo/ex vivoでの評価を進め、MTX/7-OH-MTX動態と肝障害との関連性を明確にする。また、ヒトサンプルを用いた各薬物動態制御因子のSNP解析を並行し、MTXによる肝障害発症を予測するための基礎データの収集を行う。
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Causes of Carryover |
本年度はヒトサンプルを用いたSNP解析を予定したが、倫理審査の承認に時間を要しており実施に至っていないため次年度使用額が発生した。次年度はこれらの評価に加えて、当初の計画通り検討を進める。
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