2022 Fiscal Year Annual Research Report
メトトレキサートによる臓器障害を規定する薬物動態制御因子の薬理遺伝学的解析
Project/Area Number |
20K07063
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
鳴海 克哉 北海道大学, 薬学研究院, 講師 (90746752)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | メトトレキサート / アルデヒドオキシダーゼ / 一塩基多型 / 薬物相互作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
メトトレキサート (MTX) はリウマチや造血器腫瘍のキードラッグであり、その体内動態や副作用発現には個体差が存在する。本研究ではMTXによる肝障害発現の個体差に焦点をあて、その要因を明らかにするべく種々検討した。ヒト肝癌由来細胞株HepG2を用いた検討において、MTX代謝に関わるアルデヒドオキシダーゼ(AOX)1の発現/機能を抑制することによりMTXによる細胞生存率の低下が増強することが示された。この結果から、AOX1活性がMTXによる肝毒性の発現に寄与することが示唆された。そこで、AOX活性の個人差を明らかにするため複数のデータベースよりアレル頻度の高い一塩基多型(SNP)を抽出し、各SNPの機能解析を行った。その結果、AOX1のダイマー形成能の低下を伴い酵素活性が減少するSNP(rs35217482, T755I)を見出した。有害事象自発報告データベースであるFDA Adverse Event Reporting System(FAERS)を用いて、MTXとAOX阻害薬を併用した際の肝障害発現リスクの変化を定量化したところ、実臨床における血中濃度でAOX活性を阻害し得る複数の薬剤について、併用による報告オッズ比の増加(かつ95%信頼区間の重複なし)が示された。以上、本研究によりAOX活性がMTX治療の最適化を考える上で重要な薬物動態制御因子であることが示された。引き続き、MTX治療中の患者を対象に臨床床薬物動態学研究を実施し、AOX1のSNPと治療効果/副作用発現との関連性を調査し、新規SNPの臨床的意義を明らかにする。
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