2020 Fiscal Year Research-status Report
Pathological significance of K+ channel regulation in tumor microenvironment
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20K07071
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
大矢 進 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 教授 (70275147)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鬼頭 宏彰 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 助教 (40749181)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | カリウムチャネル / がんスフェロイド / 抗がん剤耐性 / ABCトランスポーター / がん幹細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
がん研究領域におけるイオンチャネル研究では、平面培養(2D培養)したがん細胞株や担がんモデルマウスを用いて、がん細胞生存能や浸潤能に対するイオンチャネル作用薬の効果が検討されている。しかし、2D培養では固形がんの複雑なシステムを欠くため、前臨床薬の90%が治療効果を発揮できていない。 本研究の目的は、三次元(3D)スフェロイド培養システムを用いてin vitroで再現した腫瘍微小環境でのがん幹細胞能および抗がん剤耐性能の獲得におけるKCaチャネルの病態生理学的意義を解明し、KCaチャネル作用薬の悪性がん治療薬としての潜在性を示すことである。本年度の研究実施計画は、①3D培養によるKCaチャネル機能発現亢進メカニズムの解明、②KCaチャネル阻害による抗がん剤耐性能抑制効果の検討であった。 本研究には、ヒト骨肉腫・軟骨肉腫のスフェロイド培養モデルを用いて、以下のことを明らかにした。1) スフェロイド培養により骨肉腫MG-63細胞のKCa1.1活性が亢進しており、KCa1.1のタンパク分解の抑制が関与することを示唆された。siRNA実験により、KCa1.1活性が亢進に関与するユビキチンE3リガーゼFBXW7を同定した。2) 3Dスフェロイド培養モデル(MG-63及びSW-1353)において抗がん剤(パクリタキセル、ドキソルビシン、シスプラチン)耐性の獲得が見られ、KCa1.1阻害薬の前投与により抗がん剤耐性が寛解されることを明らかにした。また、抗がん剤耐性獲得にABCトランスポーターMRP1発現亢進が関与することを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度実施した2つの研究項目のうち、①「3D培養によるKCaチャネル機能発現亢進メカニズムの解明」では、ヒト骨肉腫MG-63細胞とヒト軟骨肉腫SW-1353細胞の3Dスフェロイド培養モデルを作成した。両細胞において、Ca2+活性化K+チャネルサブタイプ(KCa1.1, 2.1, 2.2, 2.3, 3.1)の中で、両細胞において主にKCa1.1が機能発現しており、特に、MG-63スフェロイドから単離した細胞では、KCa1.1活性が有意に亢進していた。KCa1.1活性亢進のメカニズム解析の結果、スフェロイド内における低酸素状態がユビキチンE3リガーゼFBXW7の発現抑制を引き起こし、KCa1.1のタンパク分解を抑制する結果としてKCa1.1活性が亢進することを突き止めた。本研究成果は、第79回日本癌学会(2020年開催)にて発表した。 また、②「KCaチャネル阻害による抗がん剤耐性能抑制効果の検討」では、MG-63及びSW-1353スフェロイドモデルにおける抗がん剤耐性の獲得が、KCa1.1阻害薬の前投与により克服されることを明らかにした。抗がん剤耐性獲得には、ABCトランスポーターMRP1発現亢進が関与しており、KCa1.1阻害薬処置により、転写因子Nrf2を介してMRP1発現が減弱することを突き止めた。①、②の結果をまとめてCancer Sci誌に論文投稿し、現在校正中(Minor Revision)である。 以上より、「全体としてはおおむね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度に実施した「KCaチャネル阻害によるがん幹細胞化および浸潤能抑制効果の検討」において、前立腺がんや大腸がんの3Dスフェロイドモデルにおいて、1) がん幹細胞マーカー(Nanogなど)の発現が亢進すること、2) 浸潤能に関わるサイトカインIL-8の発現・産生亢進することを見出した。そこで令和3年度に、サイトカインELISA測定キットや細胞浸潤活性測定キットを用いて、3D培養がん細胞の浸潤能変動に対するKCaチャネル阻害薬の効果を検討する(担当:大矢、梶栗)。 また、3Dスフェロイド培養システムを用いた研究において、アンドロゲン依存性前立腺がん細胞株LNCaPの抗アンドロゲン剤耐性獲得に、KCaチャネルが関与することを見出した。そこで令和3年度に、この現象に関与する細胞内シグナル経路と分子メカニズムを明らかにする(担当:大矢、鬼頭)。 令和3年度に学内の臨床サンプルバンクが実質的に利用可能となる。そこで、申請時に研究項目として計画した「乳がん患者の原発部位、転移部位、抗がん剤耐性獲得標本におけるKCaチャネル発現解析」を実施する(担当:大矢、梶栗)。順次、前立腺がん、大腸がん、リンパ腫についても同様の研究を実施する予定である。
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Causes of Carryover |
(理由)3月上旬に投稿した論文(Cancer Science)の掲載料として10万円程度を残していたが、審査が遅れたため使用することができなかった。 (使用計画)次年度に論文掲載が決定した際に、論文掲載料として使用する予定である。
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Research Products
(9 results)