2020 Fiscal Year Research-status Report
アトピー性皮膚炎における好塩基球を介した痒み発生機序の解明と臨床応用
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20K07081
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Research Institution | Kinjo Gakuin University |
Principal Investigator |
安東 嗣修 金城学院大学, 薬学部, 教授 (50333498)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | アトピー性皮膚炎 / 痒み / 好塩基球 / セロトニン / ヒスタミン |
Outline of Annual Research Achievements |
アトピー性皮膚炎は、難治性の激しい痒みを伴う慢性の炎症性皮膚疾患である。アトピー性皮膚炎において,痒みの発生は,不眠やストレスなど生活の質の低下に加え,痒みによる掻爬は,皮膚炎の更なる悪化や皮膚炎治療の妨げにもなる。その為,痒みのコントロールは,患者にとって非常に重要である。しかしながら,その痒みは,痒みの第一選択薬である抗ヒスタミン薬に対して抵抗性を示す場合が多く,そのコントロールは非常に難しい。このことは,ヒスタミン以外の痒みの因子の存在を示唆する。 これまでに自然発症アトピー性皮膚炎マウスモデルの皮膚において,ヒトと同様にマスト細胞が増加していることを見出したが,それに加え,健常皮膚ではほとんど認められない好塩基球が増加していることを見出した。その増加の程度がマスト細胞より大きいことが明らかとなった。そこで,好塩基球由来のアトピー性皮膚炎の痒みへの役割に関して検討を進めている。本年度は,好塩基球由来の因子の一部と痒みの関係を調べた。実験には,自然発症アトピー性皮膚炎マウスモデル(NC/Ngaマウス)を用いた。本マウスは,特定微生物制御環境下飼育すると健常状態を保ち(健常NCマウス),特定微生物の制御されてないコンベンショナル環境下で飼育し,ダニを寄生させるとアトピー様皮膚炎が発症する(皮膚炎NCマウス)。まず,健常NCマウスにヒスタミンを皮内注射したが,本マウスでは痒み関連動作の発生は認められなかった。一方,好塩基球からの産生される可能性が指摘されているセロトニンを皮内注射すると痒み関連動作が認められた。さらに,皮膚炎NCマウスの自発的掻き動作が,セロトニン受容体拮抗薬によって抑制された。さらにセロトニン受容体サブタイプに関して検討したところ,5-HT2B受容体が関与している可能性が見出された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究目的は,アトピー性皮膚炎の痒みの発生機序への好塩基球の役割に関して調べることである。まず,好塩基球由来因子と痒みと関係を調べることから始め,本年度は,セロトニンとその受容体5-HT2Bの関与を明らかにした。いまだ,セロトニン関係の薬物が痒みの抑制薬として認知されていないことから,新たな治療ターゲットになる可能性を示した成果は大きい。現在さらに痒み因子の探索を進めており,本研究は順調に進んでいると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度は,好塩基球由来因子の一つセロトニンが痒み因子であることを見出した。このセロトニンの痒み発生機序の解明に加え,さらに好塩基球由来因子の痒み因子の探索,並びに機序さらには,好塩基球の単離に基づく2次元電気泳動並びにMALDI-TOFを利用した新規痒み因子の同定を試みる。
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Causes of Carryover |
2020年度4月に富山大学から金城学院大学へ異動になり,研究のセットアップ(機器の準備並びに動物実験計画書の申請など)並びに新型コロナウイルス感染に伴う大学での活動制限に伴い研究スタートが遅れたため。現在は,研究のセットアップが整い,研究をさらに円滑に進めることができるようになったため,主に助成金は動物や試薬など物品費として,さらに研究成果の発表や論文化による公表にかかる費用として使用する。
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Research Products
(5 results)