2021 Fiscal Year Research-status Report
海馬神経の分化成熟因子を標的とした新規抗うつシグナル解明
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20K07090
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
瀬木 恵里 東京理科大学, 先進工学部生命システム工学科, 教授 (70378628)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 海馬 / 神経新生 / うつ治療 / うつ病 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では抗うつ治療が誘導する海馬での新生/分化/成熟因子シグナルを明らかにするとともに、うつ病発症モデルを用いて、海馬の機能変化がうつ様行動及ぼす影響を解明することを目的としている。 2021年度は、うつモデルを用いたストレス感受性遺伝子の探索と、不安行動発現に関わる海馬での接着関連タンパク質デスモプラキンの機能の探索を行った。 1)うつ病モデルを用いて、海馬活性化・分化/成熟シグナルの影響についての検討を行った。うつ病モデルとして社会挫折ストレスを用いた。まず、社会挫折ストレスによる海馬の神経新生プロセスを検討したところ、ストレス直後での細胞増殖が抑制されていることを見出した。そこで、成熟神経で発現するカルビンジン (Calb)に着目し、海馬歯状回の成熟神経特異的なノックダウンにより、慢性ストレス感受性にどのような影響が認められるかを検討した。予備的な知見では、コントロールで認められた忌避行動の増加が、海馬カルビンジンノックダウン動物では減弱している可能性が示唆された 2)抗うつ治療で海馬での発現減少が認められた接着因子構成因子であるデスモプラキン(Dsp)は、成熟神経特異的なノックダウンにより、不安行動の増大とともに海馬歯状回での未成熟神経分化の抑制が認められた。デスモプラキンに着目し、成熟神経での変化を調べるためにRNA seq解析による網羅的遺伝子解析を行ったところ、ニューロトロピン3(NT-3)の発現増大が認められた。そこで、NT-3遺伝子を海馬で発現増大させ、神経新生プロセスの変化について検討を行った。その結果、NT-3発現増大により、神経前駆細胞の増殖や未成熟神経の突起伸長が抑制され、不安行動の増大が認められた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実施計画では以下の3点に着目した。 項目1:海馬での新生/分化/成熟制御メカニズムを明らかにする。 項目2:海馬神経の活性依存的な抗うつ作用を明らかにする。 項目3:上記項目で検討した因子について、海馬感受性のうつ病態モデルを用いてどのような抗うつ行動に寄与するかを明らかにする。 項目1については、現在抗うつ治療の下流シグナルに関わる転写因子CREBとSRFについて、成熟神経特異的なノックダウンシステムを構築した。現在ノックダウンマウスを用いて抗うつ治療モデルである電気けいれん刺激による成熟神経の機能変化や神経新生促進にこれら転写因子がどのように寄与するかについて検討している。また抗うつ治療で発現が増大するRgs-2, Rgs-4については、海馬での強制発現ウイルスの構築に成功し、歯状回での発現増大を確認している。現在、海馬での機能変化を検討している。項目2については、近年の報告により、歯状回においては活動依存的なうつ様症状の増大が示唆されたため、計画を一部変更して、うつモデルによる活動依存性の探索を行っている。項目3については、海馬でのカルビンジン、デスモプラキンの機能に着目して、慢性ストレスによるうつ様症状に、これら因子がどの様に影響しているかを検討する。
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Strategy for Future Research Activity |
上記で記載した項目1、項目3については、計画通り、成熟神経の機能変化を同定するとともに神経新生に対する影響を残り1年で明らかにすると同時に、うつ病モデルを用いて、病態への影響を同定する。一方、項目2については、上記で述べたように近年、仮説とは反して、慢性ストレス刺激により海馬歯状回が慢性的に活性化する可能性が示唆されてきた(Anacker et al. 2018)。そこで、まず急性ストレス・慢性ストレスモデルを用いて、海馬歯状回でどの様な神経活動変化が起きているのかを、複数の最初期遺伝子タンパクの発現を検討することで、検証する。その上で、これらの神経活性化を抑制するシグナルについて、検討を行うことで、活動制御を介した抗うつシグナルの探索を継続する。
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Research Products
(6 results)