2022 Fiscal Year Annual Research Report
海馬神経の分化成熟因子を標的とした新規抗うつシグナル解明
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20K07090
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
瀬木 恵里 東京理科大学, 先進工学部生命システム工学科, 教授 (70378628)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 海馬 / 神経新生 / うつ治療 / うつ病 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では抗うつ治療が誘導する海馬での新生/分化/成熟因子シグナルを明らかにするとともに、うつ病発症モデルを用いて、海馬の機能変化がうつ様行動及ぼす影響を解明することを目的としている。2022年度はうつ治療が誘導する海馬での転写因子の活性化の寄与、うつ病発症モデルでの行動と海馬新生プロセスとの相関、ストレスで発現増大するNT-3の役割について明らかにした。 1)電気けいれん療法のモデルを用いて、海馬でのうつ治療シグナルの解明を試みた。転写因子SRFとCREBの寄与をAAV(アデノ随伴ウイルス)を用いた海馬特異的なノックダウンを用いて検討を行った。SRFのノックダウンにより電気けいれん刺激による神経成長因子の発現/新生神経促進の抑制が観察された。一方、CREBはSRFほど抑制効果が強く認められなかった。これにより電気けいれん刺激による活性化依存的転写因子の活性化はSRFの寄与が高いことが明らかとなった。 2)うつ病発症モデルである社会挫折ストレスによる海馬の神経新生プロセスを検討したところ、細胞増殖/生存の抑制を見出した。そこで、ストレス誘導性の行動変化と細胞増殖/生存抑制の相関を検討した。その結果、ストレスによる不安行動が海馬での細胞生存の抑制と最も強く相関していた。これにより、ストレスによる海馬の後期の神経新生プロセスが、不安行動の増大に関わる可能性が示唆された。 3)ストレスモデルで発現が増大するNT-3に着目し、AAVを用いて海馬で発現を増大させた場合の海馬機能変化を検討した。NT-3の高発現により、歯状回の最初期遺伝子FosBと成熟マーカーカルビンジンの発現が増大した一方で、神経新生初期プロセスの細胞増殖は抑制した。RNA seqによりNT-3シグナルの影響を検討したところ、神経新生シグナルが減少しており、NT-3の増大が成体の海馬機能をストレス負荷時と類似の方向に変化させることが明らかとなった。
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Research Products
(9 results)