2020 Fiscal Year Research-status Report
肺静脈心筋の電気活動を選択的に抑制する薬理学的機序の解明
Project/Area Number |
20K07091
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Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
田中 光 東邦大学, 薬学部, 教授 (40236617)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 肺静脈心筋 / 自動能 / 活動電位 / イオンチャネル / トランスポーター / 細胞内カルシウム / 第一群抗不整脈薬 / 心房細動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、肺静脈心筋の電気的自発活動を選択的に抑制する薬理学的機序を見出し、心房細動の薬物治療および新規治療薬開発に資する知見を得ることである。本年度はまずモルモット摘出肺静脈心筋にガラス微小電極法を適用して自発的活動電位を観測し、各種イオンチャネルやトランスポーターの阻害薬の抑制効果の有無を網羅的に検討した。ナトリウムカルシウム交換機構阻害薬SEA0400および筋小胞体カルシウム放出チャネル阻害薬のryanodineにより自発活動の著明な抑制が見られた。イノシトール3リン酸受容体チャネル遮断薬のxestospongin C、T型カルシウムチャネル遮断薬のR(-)efonidipineおよびカルシウム依存性クロライドチャネル遮断薬は弱い抑制作用を示した。 細胞内カルシウムイオンをキレートするBAPTA-AMを投与したところ、同様の抑制作用が見られたことから、上記の薬物の作用に細胞内カルシウムイオン動態に対する作用が含まれていることが示唆された。さらなる検討を行うための準備として、筋小胞体およびミトコンドリアへのカルシウムイオンの取り込みを蛍光イメージングと薬理学的処置を組み合わせることで評価する方法を確立した。 既存の治療薬に関しても検討を行った。心房筋のナトリウムチャネルに対する作用に基づく抗不整脈効果を期待して治療に用いられる第一群抗不整脈役について検討したところ、aprindine、flecainide、propafenoneは肺静脈心筋自発活動を著明に抑制したが、cibenzoline、disopyramide、pilsicainideは作用を示さなかった。単離肺静脈心筋細胞に膜電位固定法を適用して検討したところ、これらの薬物の自発活動抑制効果はナトリウム電流の持続性成分に対する作用に基づくことが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
肺静脈心筋自発活動を安定して観測する実験系を構築して主なイオンチャネル・トランスポーターの阻害薬の効果を網羅的に検討し、いくつかの重要な機能分子を特定した。細胞内への作用も関与することも判明したため、更なる検討に有用な測定法を確立した。既存の6種の抗不整脈薬に関して肺静脈心筋への作用の有無を明確化し、興味深い作用を有する薬物を同定出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの検討で同定できた肺静脈心筋自動能に対して抑制作用を示す薬物に関して、洞房結節正所性自動能に対する作用を観測して肺静脈に対する選択性の有無を明らかにする。主に選択性が見られた薬物について、細胞内カルシウムイオン、ナトリウムイオンに対する影響を明らかにし、細胞膜に対する作用に加えて筋小胞体やミトコンドリアのイオンチャネルやトランスポーターに対する作用の有無を検討する。
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