2021 Fiscal Year Research-status Report
漢方医薬学と数理情報科学の融合による未病の科学的予測に基づく新規炎症性疾患治療
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20K07098
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
門脇 真 富山大学, 和漢医薬学総合研究所, 名誉教授 (20305709)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 炎症性腸疾患(IBD) / 未病 / DNB解析 / 再燃 / IL-10 / 腸管マクロファージ |
Outline of Annual Research Achievements |
炎症性腸疾患(IBD)は寛解と再燃を繰り返す難治性の慢性炎症疾患であるが、炎症の遷延化や再燃の機序は不明であり、再燃モデルも確立していない。最近、IBDの長期寛解維持には、大腸での慢性炎症の徹底的な抑制とその結果としての腸管粘膜の完全な修復が必要であることが報告され、発症後、再燃後の医療介入よりも発症前、再燃前の予防的医療介入の優位性、重要性が示唆されている。しかし、再燃の予防とそれによる長期寛解の維持を目的とした治療薬は開発されていないため、有用な治療薬の創出が強く求められている。そこで、状態遷移の臨界点での「生物学的ゆらぎ」を捉える数理学的解析手法である動的ネットワークバイオマーカー(Dynamical Network Biomarker: DNB)解析によるIBDの未病・再燃前規定因子群の検出及びIBDの未病・再燃前規定因子群の生理学的及び病態生理学的役割の解明のため、急性大腸炎モデル、再燃大腸炎モデル、炎症関連発癌モデルをこれまでに確立した。そこで先ず、急性DSS大腸炎モデルを用いて、1日から7日まで経日的に5匹ずつの大腸炎マウスの大腸を摘出し、全ての網羅的全遺伝子発現解析を行った。その結果、大腸炎の症状は3日目までは観察されず、5日目及び7日目で顕著に現れた。一方で、DNB解析により、3日目に多くの遺伝子(未病遺伝子)が相関して大きくゆらぎ、発症前である未病のタイミングが3日目にある事が分かった。そこで、この急性大腸炎マウスの大腸組織における未病遺伝子群の病態生理学的特徴や役割を解明するためにgene ontology解析やKEGGパスウェイ解析を行っている。さらに、これまでに見出した腸管マクロファージでの抗炎症性サイトカインIL-10の産生を亢進させる漢方薬構成生薬や急性大腸炎モデルで抑制効果を見出した漢方薬の未病遺伝子群に対する作用を検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染症の拡大により、共同研究打ち合わせの出張や学会出張などの自粛による他大学の研究者との共同研究の遂行に支障が生じ、さらに大学院生の研究活動の抑制により研究の遂行に支障が生じた。しかし、急性大腸炎モデルの大腸サンプルでの網羅的全遺伝子発現解析を終了し、未病遺伝子群を見出した。
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Strategy for Future Research Activity |
本学および他大学において、コロナ禍での研究遂行への対応策も整備され、研究を遂行する上での課題は軽減されつつあるため、共同研究者との更なる研究の進展に取り組む。今後、未病遺伝子群の病態生理学的役割の解明に取り組むと共に、未病状態での薬剤介入で用いる事が出来る漢方薬関連薬剤の有用性に検討を行う。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の拡大により、学術大会や共同研究のための旅費を使用しなかった事、および研究活動が制限され研究消耗品を予定よりも購入しなかった事により、次年度使用額が生じた。本学および他大学において、コロナ禍での研究遂行への対応策も整備され、研究を遂行する上での課題は軽減されつつあるため、研究目的を達成するため、計画遅延した研究や共同研究を精力的に進める。
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