2022 Fiscal Year Annual Research Report
Study on quinone dimer formation and redox disproportionation in plant polyphenol metabolism
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20K07102
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
田中 隆 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(薬学系), 教授 (90171769)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ポリフェノール / 紅茶 / キノン / 酸化還元 / エラジタンニン / テアルビジン / 茶 |
Outline of Annual Research Achievements |
ポリフェノールの健康維持効果は社会的に広く認知されているが、化学的には未解明の点が多い。ポリフェノールを多く含む茶は、人類が水の次に多く飲んできた飲料であり、世界の茶生産の8割を紅茶が占める。したがって紅茶は人類の最も重要なポリフェノール摂取源である。これまで紅茶成分の生成機構について多くの知見を報告してきたが、紅茶の主成分であるテアルビジンと呼ばれる高分子ポリフェノールの構造や生成機構は未解明である。最終年度は最近多くの生物活性が報告されるようになったテアルビジンの生成機構を解明することを主要テーマとした。紅茶製造時に生茶葉を揉捻すると茶カテキンが酵素酸化され一旦不安定なキノン二量体が生成する。この物質は加熱乾燥工程で分解するが、精製して水溶液中で加熱すると、酸化還元不均化反応が起こり、還元生成物として紅茶のテアシネンシン類が、酸化生成物として重合物が生成する。その重合物の13C-NMRを測定したところ、テアルビジンのものときわめてよく類似していた。また、その分解反応に茶カテキンを共存させると、生成する重合物に共存カテキンが取り込まれることが分かった。その取り込み機構を明らかにするために、カテキンの部分構造に相当する物質を添加したところ、キノンとカテキンA環が結合していることが分かった。さらにキノン二量体が酸化されてできる重合物にはキノン構造が保持されており、それとA環との反応がさらに起こることで分子の延長が進展し、高分子ポリフェノールが生成すると推測された。 その他、ジヒドロカルコン配糖体の酸化でもキノン経由で色素が生成することを初めて明らかにし、二量体色素の構造と高分子色素の部分構造、およびそれらの生成機構を詳細に解明した。また、カシワ新鮮葉中でのエラジタンニンの酸化的分解における最初生成するキノン中間体の構造を初めて確認した。
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