2020 Fiscal Year Research-status Report
アロマセラピーの睡眠促進および睡眠異常改善効果の客観的エビデンスを確立する
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20K07110
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
村田 雄介 福岡大学, 薬学部, 助教 (90461508)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森 征慶 福岡大学, 薬学部, 助教 (00759251)
大江 賢治 福岡大学, 薬学部, 教授 (30419527)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | アロマセラピー / 睡眠 / 精油 / ベルガモット / 視索前野 / 青斑核 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では「アロマセラピーにはどのような、どれくらいの睡眠促進/睡眠異常改善効果があるのか?」を研究課題の核心をなす学術的「問い」として設定した。令和2年度の研究計画では、教科書的に睡眠改善作用が示されているラベンダーやベルガモット等の精油を健常動物に吸入させ、1)入眠するまでの時間(潜時)や総睡眠時間といった睡眠パラメーターを解析する、2)その睡眠導入効果を既存の睡眠薬の効果と比較する、3)精油の吸入により活性化される脳領域を同定する、という3つの研究項目を実施した。 結果として、1)ベルガモット精油を吸入曝露させた健常マウスにおいて、入眠潜時の短縮、総睡眠時間の増加が見られた。2)ベンゾジアゼピン系睡眠薬のブロチゾラムの腹腔内投与による睡眠導入効果と比較して、ベルガモット精油吸入曝露は同等の効果を示した。3)ベルガモット精油の吸入曝露後、パラホルムアルデヒドで経心的に灌流固定したマウス全脳を対象として、神経活動性のマーカー分子であるc-fosの網羅的解析を行った結果、睡眠の制御に重要な脳領域である視索前野において、c-fos発現量の著明な増加が見られたほか、覚醒反応を司る脳領域の青斑核においては、c-fos発現量の減少が見られた。 これらの研究結果より、ベルガモット精油には既存の睡眠薬に勝るとも劣らない優れた睡眠導入効果があること、またその効果発現のメカニズムとして脳内の睡眠/覚醒の制御領域にはたらきかけること、が明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和2年度は、新型コロナウイルス禍に伴う大学の入構制限やテレワーク推奨のあおりを受け、特に上半期の研究が十分に行えなかった。また本研究計画以外の研究についても大幅なマンパワー(研究協力者)の低下が生じたため、当初想定していた以上に他の研究に対するエフォートを振り分け直さなければならず、全体として研究の進捗は遅れてしまった。 また、当初の計画では睡眠パラメータの解析に「マウスの様子をビデオカメラで撮影し、その後肉眼で解析」「赤外線ビームセンサーでマウスの活動をモニター」という2つの手法を用いる予定であった。しかし、小型で廉価な脳波解析用デバイスを試用する機会があり、その実用性の高さから研究計画の見直しを行った。そのため、下半期は脳波解析用デバイスをマウスに埋め込むためのオペ技術習熟に時間を要し、結果として研究の進捗が滞ることとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
「進捗状況」の欄に記載したように、本研究計画で用いる実験手法について大幅な見直しを行った。具体的には、各種精油の吸入曝露による脳波への影響を解析することで、客観的かつ定量的な睡眠/覚醒のリズムが評価可能になると予想される。同様に、本研究計画の後半で実施予定の睡眠異常動物(ストレス負荷や断眠処置により作製予定)に対する精油吸入曝露実験を行う上で、脳波解析に基づく睡眠状態の変化を正確にモニターできるようになることが期待される。 また、ベルガモット精油の吸入曝露による神経活性化、または不活性化状態の脳内マッピングの結果を通じて、1)精油の濃度による用量依存的変化、2)精油の曝露時間による経時的変化)についても評価すべきであると考えた。さらに、3)活性化または不活性化された神経のフェノタイプ(どのような神経伝達物質により情報伝達をしているか、という神経タイプ)の同定、4)精油に含まれる主要な成分を単体で曝露しても同様の変化が得られるか、という点についても解析が必要である。 令和3年度以降も新型コロナウイルス禍とその対策により、研究計画の見直しや立て直しがたびたび必要になることが危惧されるが、前年度の経験を糧に、柔軟かつ頑強に研究計画を推進していきたい。
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Research Products
(1 results)