2021 Fiscal Year Research-status Report
Development of comprehensive cancer immunotherapy using metabolism inhibitors
Project/Area Number |
20K07124
|
Research Institution | Microbial Chemistry Research Foundation |
Principal Investigator |
百瀬 功 公益財団法人微生物化学研究会, 微生物化学研究所 沼津支所, 主席研究員 (10270547)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
飯島 正富 公益財団法人微生物化学研究会, 微生物化学研究所 沼津支所, 研究員 (10184342)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 免疫チェックポイント / 乳酸デヒドロゲナーゼ / キヌレニン |
Outline of Annual Research Achievements |
免疫チェックポイント阻害剤はがん治療に革新をもたらす画期的ながん免疫療法となったが、その奏効率は10-30%と低いことが問題となっている。がん細胞の産生するキヌレニンや乳酸は免疫細胞の機能の減弱化をもたらすことから、本研究ではキヌレニンおよび乳酸のそれぞれの生合成酵素の阻害剤を創製し、キヌレニンおよび乳酸の蓄積を軽減させることにより免疫細胞を賦活化し、免疫チェックポイント阻害剤の奏効率向上を目指すことにした。 キヌレニン合成経路の律速酵素であるインドールアミン酸素添加酵素1(IDO1)の阻害剤は、がん細胞株におけるインターフェロンγ誘導によるキヌレニン産生を強く抑制する。そこでがん細胞のキヌレニン産生抑制を指標にIDO1阻害剤を探索した。その結果、弊所化合物ライブラリーに含まれるアミノ酸誘導体Aに強いキヌレニン産生抑制活性があることを明らかにした。詳細な解析によりアミノ酸誘導体AはIDO1に対して阻害活性を持たないが、細胞内で代謝されたアミノ酸誘導体A代謝物がIDO1阻害活性を有している可能性が示唆された。そこで誘導体Aの類縁体合成によるSAR研究を行い、阻害活性に関与している部分構造を明らかにした。また誘導体Aのマウスにおけるin vivo試験を実施し、100 mg/kgの誘導体Aを静脈、経口および腹腔内投与したところ、いずれの投与経路でも血中でほとんど検出されず、速やかに分解されることが明らかとなった。 LDH阻害剤については、ヒト組み換えLDHを用いたin vitroアッセイにて阻害剤探索を行った。ケミカルライブラリーよりLDH阻害活性を示す化合物を見出したが、ライブラリー化合物に含まれる微量成分に強い阻害活性があることが判明し、現在その微量成分の同定中である。またマウスがん細胞株におけるLDH発現を確認し、それぞれの細胞株のマウスにおける造腫瘍性を確認中である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
キヌレニン産生阻害剤アミノ酸誘導体Aの発見が本研究課題の発展に大きく寄与した。アミノ酸誘導体Aは比較的単純な化学構造を有しているため有機合成が可能であり、しかも合成方法が容易であることから、実験サンプルの速やかな供給が可能になった。特に動物実験においては大量のサンプルを必要とするが、サンプル供給の問題がなく実験を実施することができた。また類縁体合成によるSAR研究から、代謝物にIDO阻害活性があることを見いだせた。一方で、LDH阻害剤の探索においては順調とは言えず、これまでに有効なLDH阻害剤を見いだせていない。今までは探索源としてin-house微生物培養液ライブラリーや化合物ライブラリーを利用してきたが、今後外部機関の化合物ライブラリーを積極利用する予定である。進展が順調な研究と不順な研究があるが、総合するとおおむね順調に進展していると考える。
|
Strategy for Future Research Activity |
早急に、マウスにおける免疫チェックポイント阻害剤の抗腫瘍活性を評価するin vivoアッセイ系を確立させる。現在、免疫チェックポイント阻害剤のin vivo評価で実績のあるマウス大腸がん細胞に加えて数種のマウスがん細胞をマウス皮下に移植し、その造腫瘍性について確認中である。次に、造腫瘍性が確認できたがん細胞を用いて同種移植モデルマウスを作成し、そこにマウス抗PD-1抗体を投与し抗腫瘍活性を確認することで、免疫チェックポイント阻害剤のin vivo評価系の確立を目指す。 キヌレニン産生阻害剤およびLDH阻害剤の探索研究は継続し、これまでに得られた阻害剤を超える活性を有する化合物を探索する。キヌレニン産生阻害剤であるアミノ酸誘導体Aはこれまでの研究により代謝物にIDO1阻害活性があることが推定され、またSAR研究から阻害活性に関与する部分構造も明らかとなっていることから、IDO1阻害活性を有し且つ代謝安定性がある誘導体を合成する。LDH阻害剤に関しては、これまでに優れた阻害剤が得られていないことから、外部化合物ライブラリーの積極利用の他に、既存LDH阻害剤をシード化合物とした合成展開についても検討する予定である。以上の研究により見出されたキヌレニン産生阻害剤やLDH阻害剤は、先に確立された同種移植がんモデルマウスを用いて免疫チェックポイント阻害剤の抗腫瘍活性の増強効果を検討する。
|
Causes of Carryover |
実験の効率化により試薬が節約できたため一部の予算を次年度に繰り越した。
|