2020 Fiscal Year Research-status Report
シスプラチンに耐性化したがんに対する普遍的治療における光線力学療法の応用
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20K07169
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Research Institution | Kobe Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
堀部 紗世 神戸薬科大学, 薬学部, 講師 (50389110)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | シスプラチン耐性 / 光線力学療法 / 5-アミノレブリン酸 |
Outline of Annual Research Achievements |
シスプラチン(CDDP)に耐性化したがんに対する普遍的治療法として、光線力学療法(PDT)に着目し、「CDDP耐性獲得機構におけるミトコンドリア機能低下の関与」と「ミトコンドリア集積性のある光感受性物質を用いたPDTの有効性」を明らかにすることを目的として行っている。 まず、CDDP耐性獲得機構におけるミトコンドリア機能低下の関与について、ヒト子宮頸がん由来HeLa細胞から樹立したCDDP耐性細胞を用いて検討した。ヒト肺がん由来A549細胞から樹立したCDDP耐性細胞ではミトコンドリアDNA(mtDAN)変異によるミトコンドリア機能低下によって、細胞内活性酸素(ROS)の産生が増加していることがCDDP耐性化に関与することを明らかにしている。ヒト子宮頸がん由来HeLa細胞から樹立したCDDP耐性細胞では、A549細胞由来CDDP耐性細胞同様に細胞内ROSが増加していたが、親細胞と異なるmtDNA変異は認められなかった。したがって、A549細胞とは異なる機序で細胞内ROSを増加させ、CDDP耐性獲得に関与している可能性が考えられた。次に、ミトコンドリア集積性のある光感受性物質を用いたPDTの有効性について、副作用の少ない5-アミノレブリン酸(5-ALA)を用いて検討した。その結果、CDDP耐性度依存的に5-ALAを用いたPDTによる殺細胞効果が減弱していることを明らかにした。これは予備検討と異なる結果となっている。この要因として、予備検討で用いた光照射器は蛍光灯であったが、現在はLEDが主流になっており同じ光照射器を購入することができなかった。おそらく、光照射器の影響により異なる結果になったと考えられる。今後、625 nmのLED光照射器を用いて、CDDPに対して耐性化したがんに対して5-ALA-PDTの有効性を高められる方法を検討する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナの影響で在宅勤務が増え、実験する時間が減ったことが要因である。 また、予備検討していた結果と異なる結果となっており、研究計画を余儀なく変更する運びとなったため。
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Strategy for Future Research Activity |
CDDPに対して耐性を示したがんに対して5-ALAを用いたPDTの有効性を高める研究を行う。 そのため、当初の研究計画であったルシフェラーゼを発現するCDDP耐性細胞を樹立し、CDDP耐性担癌マウスを作出し、in vivoで5-ALAを用いたPDTの有効性について検証する。 「制御された細胞死」の一つに同定されたフェロプトーシスは、脂質性ROSにより細胞傷害が生じる現象である。CDDP耐性細胞ではROSの産生が増加していることから、多価不飽和脂肪酸投与すると細胞内脂質性ROSが増加すると予想でき、フェロプトーシスによる細胞死を誘発する可能性が考えられた。そこで、多価不飽和脂肪酸を併用することにより、CDDPに対して耐性化したがん細胞に対する5-ALA-PDTによる殺細胞効果が増強するか、検討する。
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Causes of Carryover |
コロナの影響で在宅勤務が増加していたため、研究に使用する金額が予定より少なくなった。 次年度は、担癌マウスを作出して組織学的な評価を行っていくため、マウス代、飼育代および観察に必要な顕微鏡のリース代に費用を充てる予定である。
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