2021 Fiscal Year Research-status Report
エネルギー源輸送を担うMCTsの機能解析と治療薬の探索
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20K07171
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
小林 正紀 北海道大学, 薬学研究院, 教授 (70431319)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | モノカルボン酸輸送担体(MCT) / 乳酸 |
Outline of Annual Research Achievements |
本邦において高齢者に頻発する糖尿病や認知症等の疾患に対する有効な予防・治療法の開発が求められている。この対策として栄養介入による効果を期待するものが数多く報告され、これは生体内のエネルギー源の重要性を示唆するものである。最近エネルギー源として認知されてきた乳酸やピルビン酸とこれらを輸送するヒトモノカルボン酸輸送担体(hMCT)は、上記疾患と関連することが示唆されている。しかしながらhMCTの機能および生体内の役割については未だ不明な点が多い。そこで本研究ではhMCTの中でもhMCT2, 11に着目し、細胞における機能・発現を明らかにすることで、これらを標的とした化合物の探索を行う。昨年度は、hMCT2の評価系の樹立に成功したことから、今年度はhMCT11の評価系の構築を目的とするとともに、臨床研究における知見との比較・考察を試みた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
臨床研究において2型糖尿病患者85名をhMCT11の変異型である5SNP haplotypeの有無により2群に分け、2群間の糖尿病関連検査値を調査した。その結果、空腹時血糖、総コレステロールならびにLDLコレステロールにおいて、2群間に有意な差が見られた。一方で、2群間の合併症の有無および使用薬については有意な差は認められなかった。次にin vitro においてヒト胎児腎由来HEK293T細胞およびヒト肝癌由来HepG2細胞に野生型hMCT11プラスミドを導入した細胞を構築した。いずれの細胞においても導入により、hMCT11の発現増大を確認した。これらの細胞を用いてグルコースの取り込みあるいは細胞内濃度が変動するかを検討した結果、hMCT11一過性発現HEK293T細胞においてグルコース取り込み量が減少した一方で、細胞内のグルコース濃度は上昇した。またhMCT11一過性発現HepG2細胞ではグルコース輸送・細胞内量に有意な差は認められなかった。次にこれらの細胞における糖、脂質代謝関連因子について発現変動があるか、Real-time PCRにより評価した。その結果、hMCT11一過性発現HEK293T細胞において、ヘキソキナーゼ2のmRNA量が有意に上昇した。したがってhMCT11が糖代謝に影響を及ぼす可能性、またhMCT11の機能が細胞間あるいは組織間で異なる可能性が示された。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の結果よりhMCT11の役割の一端を明らかとし、その特性の解明を試みた。昨年度のhMCT2の機能解析結果と合わせて、細胞レベルにおけるhMCT11、hMCT2の役割の解明を進めるとともに、これらを標的とした化合物の探索を行うことで糖尿病・認知症の予防・治療の一助としたいと考える。
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Research Products
(3 results)