2020 Fiscal Year Research-status Report
血液精巣関門インフラックス輸送機構の解明と精巣内薬物送達への応用
Project/Area Number |
20K07173
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
久保 義行 富山大学, 学術研究部薬学・和漢系, 准教授 (20377427)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
細谷 健一 富山大学, 学術研究部薬学・和漢系, 教授 (70301033)
赤沼 伸乙 富山大学, 学術研究部薬学・和漢系, 助教 (30467089)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 血液精巣関門 / トランスポーター / 栄養物輸送 / 薬物輸送 |
Outline of Annual Research Achievements |
精巣では、精子形成などの生理的イベントに加え、胚細胞腫瘍(精巣腫瘍)やヒト免疫不全ウイルス(HIV)などの感染症、男性不妊、精巣毒性といった病態が知られる。これらの原因究明や薬物療法の向上には、血液精巣関門の輸送機構に関する知見が有用と考えられ、特にインフラックス輸送機構の把握とその分子機序解明が必須となる。本研究課題では、血液精巣関門に存在するインフラックス輸送機構に着目して、1) 薬物・栄養物輸送機構の探索、2) 機能特性の解明、3) 分子実体の同定、4) 個体での発現と役割、を検証・解明し、血液精巣関門インフラックス輸送機構の薬物送達への応用に向けた基盤を構築することを目的とした。令和2年度は、主に「1) 薬物・栄養物輸送機構の探索」をin vivoレベルで実施した。その結果、血液精巣関門には、栄養物であるtaurineやcholine、毒物であるnicotine、薬物であるzidovudineなどを輸送基質として認識するインフラックス輸送機構の存在が示された。このことは、これら薬物や栄養物が血液精巣関門を介して循環血液から精細管内腔へ効率的に移行することを示唆しており、血液精巣関門のインフラックス輸送機構が、新規薬物送達法の開発や薬物動態予測・毒性回避に有用となる可能性を示すものである。また令和2年度では、次年度における「2) 機能特性の解明」および「3) 分子実体の同定」の実施に向けて、マウスセルトリ細胞由来TM4細胞や初代培養ラットセルトリ細胞などのin vitroモデル細胞解析系の条件検討を行った。テスト薬物として用いたzidovudineに関しては、その輸送に温度依存性や濃度依存性、Na+非依存性が示され、血液精巣関門におけるzidovudine輸送が担体介在型であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、血液精巣関門に存在するインフラックス輸送機構に着目して、1) 薬物・栄養物輸送機構の探索、2) 機能特性の解明、3) 分子実体の同定、4) 個体での発現と役割、を検証・解明し、血液精巣関門インフラックス輸送機構の薬物送達への応用に向けた基盤を構築することを目的としている。令和2年度は、種々検討の結果、in vivo解析手法の1つであるラットインテグレーションプロット法が、血液精巣関門のインフラックス輸送機構の探索に有用であることが示された。これを用いた輸送機構の探索では、薬物や栄養物を基質とするインフラックス輸送機構が血液精巣関門に存在することが示唆された。またin vitro解析においては、血液精巣関門を介したzidovudine輸送が担体介在型であることが示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度では、血液精巣関門を介したインフラックス輸送機構の探索にラットインテグレーションプロット法が有用であることが明らかとなったことから、今度もインフラックス輸送機構の探索を継続してゆく予定である。また、in vitroモデル細胞解析系の条件検討も概ね完了したことから、taurineやcholine、nicotine、zidovudineなどのインフラックス輸送機構に関して、「2) 機能特性の解明」および「3) 分子実体の同定」をin vitroレベルで実施してゆく予定である。
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Causes of Carryover |
令和2年度では、インフラックス輸送機構の探索手法の検討に多数の試薬や時間を要すると想定していたが、ラットインテグレーションプロット法の最適条件が比較的効率的に見出されたことから、研究費の次年度使用が生じた。これに関しては、令和3年度に実施予定のin vivo/in vitro解析に使用する試薬類の購入に充てる予定である。
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