2023 Fiscal Year Annual Research Report
ストレス感受性因子NPAS4の機能破綻によるせん妄発症機構の解明と治療薬の開発
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20K07181
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
日比 陽子 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 教授 (70295616)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木村 和哲 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 教授 (00423848)
片岡 智哉 千葉科学大学, 薬学部, 准教授 (20737928)
堀田 祐志 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 准教授 (90637563)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | Neuronal PAS domain 4 / せん妄 / ストレス |
Outline of Annual Research Achievements |
「せん妄」は急激に認知機能障害や興奮・妄想・幻覚などの統合失調症症状が現れ、患者自身やその家族、治療にあたる医療者にも負担となる。せん妄は、認知症の既往などの脳の脆弱性がリスクでありストレスやベンゾジアゼピン系薬剤が要因の一つと考えられている。一方、転写因子Neuronal PAS domain 4 (NPAS4)はGABA神経の分化・シナプス形成に関わる重要な因子であることが示されており、全身性NPAS4遺伝子欠損 (NPAS4-KO) マウスは多動、不安関連行動の減少、記憶の低下、協調運動や運動学習能力の低下を示す。Npas4-KOマウスの脳各部位においてGABA受容体のmRNAレベルが顕著に低下しており、GABA系の低下は炎症亢進やせん妄発症との関わりが深い。Npas4はストレス負荷により発現低下することから、この転写因子がストレス・GABA神経系障害・せん妄発症の関係の鍵であると考えられる。最終年度は、患者の身体状態とせん妄発現の関連、および使用薬剤によるせん妄発現低下の可能性について探索をおこなった。この調査については、該当する患者数が少なく統計解析可能なほど集まらなかった。また、名古屋大学医学部動物実験施設においてNpas4-KOマウスを維持し、せん妄を示す行動について検討し、学会等で他の研究者とせん妄様行動の判定について情報交換を行った。認知記憶障害をせん妄と結び付ける研究者が多い他、不安行動の減少や概日リズムの変調を指標として評価するグループもある。せん妄の指標となる行動薬理学的解析については、引き続き取り組んでいく。一方、精神的ストレスは間質性膀胱炎の増悪や排尿障害とも関連し、下部尿路異常とせん妄の関連も示唆されていることから、培養細胞や間質性膀胱炎モデル動物を用いて炎症因子など解析も行った。
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