2020 Fiscal Year Research-status Report
医薬品の安定性に関する既存データ補完のための極微弱化学発光測定法の応用
Project/Area Number |
20K07182
|
Research Institution | Tohoku Medical and Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
村井 ユリ子 東北医科薬科大学, 薬学部, 教授 (70209998)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 医薬品の安定性 / 化学発光測定法 / 光酸化 / 酸化劣化 / 後発医薬品 / 医薬品銘柄 / 調剤薬 / 一包化調剤 |
Outline of Annual Research Achievements |
目的:医薬品の物理化学的安定性に関する情報の多くは、製薬企業から提供される医薬品個々の包装状態におけるデータである。一方、調剤を経て患者の手元で保管される調剤薬は、それぞれの患者の処方に合わせて一包化されたり粉砕・混合されたりすることが多いが、これについての安定性情報は非常に限られている。この状況を解決するため、迅速・簡便で高感度に酸化劣化を検出できる極微弱化学発光測定法により安定性の予測が可能かどうか明らかにする。 実績の概要:パイロット試験結果をふまえ、今年度は一包化された調剤薬を想定して、先発医薬品と後発医薬品の銘柄間の安定性の差異を検討した。臨床で汎用されるテルミサルタンを主成分とする14種の錠剤(先発品、後発品を含む)を試料とし、以下のA~Cの光環境に置いた。条件A: PTPシート包装、遮光、室温。条件B:一包化、室内散光 1週間、室温。条件C:一包化、露光4000 Lux 2週間、室温。一包化にはセロポリの分包紙を用いた。これらの試料から包装を取り除いた錠剤について、ケミルミネッセンスアナライザー (CLA-FS4、東北電子産業(株)) でケミルミネッセンスを測定した。その結果、14製剤の積算発光量は、条件Aで4.7~7.3 x 106 cpm、条件Bで4.7~9.6 x 106 cpm、条件Cで4.9~25.9 x 106 cpmであり、各銘柄で露光により発光量が増加した。また、医薬品の銘柄間で露光による発光量の増加率に差異が認められた。肉眼では変色が認められなくても発光量の増加が認められた銘柄があり、極微弱化学発光測定法は光酸化による調剤薬の劣化を鋭敏に評価できる可能性が示唆された。 これらの成果は日本薬学会第141年会(web開催)で発表することができた。今後は種々の条件や剤形によりさらに検討を行いたい。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
COVID-19の蔓延に伴い研究活動が制限された。特に、年度の前半から半ばにかけて学外の研究施設で予定していた化学発光測定が困難になり、データの取得が十分にできなかった。 しかし、年度末3月にweb上で開催された学会には今年度の成果をまとめて参加・発表することができた。 学内では他の研究者との三密を避けて感染予防対策をとったうえで実験するなど、調整に工夫を重ねたうえで実施したものの、全体として進捗状況は「やや遅れている」と評価される。
|
Strategy for Future Research Activity |
引き続き三密を避けての実験や感染予防対策など、昨年度の経験を生かし、工夫を加えて進めて行きたい。 成果の論文発表のため、原稿の執筆を開始している。次年度できるだけ早い時期に投稿できるよう準備を進める。 さらに研究の推進のために、データ整理のアルバイト採用等、当初は予定していなかった事項を検討し、研究時間を確保することを考えている。
|
Causes of Carryover |
上述のとおり、COVID-19の影響によって学外での研究活動が大幅に制限されたため、学外の研究施設に試料を持ち込んでの測定費用や試料運搬/交通費、学会出張費などの支出が予定より大分少なかった。 測定の準備は整っているので、令和3年度は可能なところから順次研究を進める。当初から予定していた測定費用、試料用医薬品購入費用、論文投稿費用等の支出のほか、新たに研究時間の確保のため、データ整理等のためのアルバイト採用を検討し、その費用を支出する。
|
Research Products
(3 results)