2020 Fiscal Year Research-status Report
Pathophysiological role of Na+-dependent citrate transporter in central nervous system
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20K07190
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
藤田 卓也 立命館大学, 薬学部, 教授 (00247785)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | Na+依存性クエン酸トランスポーター / 糖尿病 / クエン酸回路 |
Outline of Annual Research Achievements |
クエン酸は脂質やコレステロールの炭素源であり、代謝エネルギー産生の基質にもなることから、肝臓におけるクエン酸回路中間体の中でも中心的な役割を担っている。肝細胞内へのクエン酸の供給は、主に Na+ 依存性クエン酸トランスポーター(NaCT)を介して血液中から肝臓に輸送される。近年、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)などの代謝性肝疾患患者の肝臓での脂肪蓄積と NaCT の発現亢進の関連性が示唆されている。2型糖尿病発症時においても NaCT の発現が増大することが報告され、2型糖尿病患者での高い NAFLD 発症率と NaCT との関連が注目されている。同様に、1型糖尿病患者においても NAFLDの発症が高頻度で起こるが、その発症と NaCT 発現との関係については未だ不明であることから、1型糖尿病モデルマウスを用いて NaCT の発現変動と脂肪蓄積の関連、高血糖時に活性化される protein kinase C(PKC)による NaCT の輸送機能制御に関して検討を行った。 今年度は、Streptozotocin で惹起した1型糖尿病モデルマウスの肝臓における NaCT の発現変動を検討した。糖尿病モデルマウスにおける肝臓中の NaCT の発現量は、正常マウスと比較して有意に減少した一方で、遊離肝細胞を用いたクエン酸取り込み活性には有意な差が認められなかった。一方、高血糖時に様々な組織において活性化することが報告されている PKC による NaCT の輸送活性制御機構を、ヒト肝がん細胞株 HepG2 を用いて検討した結果、NaCT の輸送活性は PKC により負に制御されていることを明らかにすることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究においては、まず糖尿病病態時の肝臓でのクエン酸トランスポーター(NaCT)の活性、機能解析を中心に検討を進めてきた。これと並行して、こうした病態時の中枢でのNaCTの発現・活性変動に関しても検討すべきところではあったが、コロナ下での施設内研究の制限等も2カ月ほど続いたこともあり、検討に至っていない。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、昨年度実施できていない糖尿病時の中枢でのクエン酸トランスポーターの発現・活性変動に関してまず検討を進めるとともに、マウス大脳皮質初代培養細胞・グリア細胞を用いて、高グルコース・低グルコース条件下でのクエン酸輸送の変動に関して検討を加える。 また、アストロサイトにおけるクエン酸輸送を担うと考えられるトランスポーターNaDC3のクエン酸輸送機構に関しても検討を進める。アストロサイトには有機アニオン輸送を担うトランスポーターOAT3も発現している。OAT3は腎臓において内因性基質や薬物、その代謝物などのアニオン性化合物の尿中排泄に重要な役割を果たすトランスポーターであるが、アストロサイトにおける OAT3 の機能に関しては検討がなされておらず、その生理的意義は不明である。NaDC3 とOAT3とを発現する腎近位尿細管上皮細胞では、細胞外から有機アニオンを取り込む際に、NaDC3により細胞内に輸送されたジカルボン酸と細胞外の有機アニオンとを OAT を介して交換輸送するしくみとなっており、OATとNaDC3 が機能的に連関することが報告されている。そのため、アストロサイト内で合成されたTCA回路中間体を細胞外に放出し、ニューロンへと供給する経路として細胞内のジカルボン酸と細胞外の有機アニオンとをOAT3を介して交換輸送する経路があるのではないかと考えられる。そこで本年度は、マウスアストロサイトにおけるOAT3とNaC3との機能的関連性に関しても検討を加える予定である。
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Causes of Carryover |
購入予定であったプラスチック製細胞培養ディッシュが、培養関係消耗品の国際的な納期の遅れで3月納品できなかったため、次年度使用額が生じた。今年度は、繰越金も含めて、特に細胞培養関係の消耗品の購入を中心として使用する予定である。
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