2020 Fiscal Year Research-status Report
脳内免疫の賦活化はアルツハイマー型認知症の新たな治療戦略となるのか
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20K07192
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Research Institution | Kobe Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
力武 良行 神戸薬科大学, 薬学部, 教授 (50419488)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | アルツハイマー / アミロイドプラーク / 血管老化 / ミクログリア |
Outline of Annual Research Achievements |
血管内皮特異的に老化を示すマウス(TIE2-TERF2DN-Tgマウス)とアルツハイマー病(AD)モデルマウスであるAPP/PS1マウスを交配して、血管内皮細胞特異的老化ADモデル(APP/PS1;TERF2DN)マウスを作出し、認知機能、脳内Aβプラークの形成など、表現型について解析した。 Y字迷路試験によって短期記憶(空間作業記憶)を、モリス水迷路試験によって長期記憶(空間参照機能)を評価したところ、いずれもAPP/PS1マウスでは野生型マウスと比較して有意に低下していたが、APP/PS1;TERF2DNマウスでは野生型マウスと同程度であり、低下していなかった。APP/PS1;TERF2DNマウスでは、APP/PS1マウスと比較して脳内Aβプラークの形成は抑制されていた。TIE2-TERF2DNマウスでは、野生型マウスと比較して脳内ミクログリアは活性化を示す形態変化を示し、脳から単離したミクログリアでは、炎症性サイトカインやケモカインのmRNA発現が上昇していたことから、活性化していることが明らかになった。また、TIE2-TERF2DNマウスから単離培養したミクログリアでは、野生型マウスから単離培養したミクログリアと比較して、in vitroにおいてAβ貪食能が亢進していた。 以上の結果より、APP/PS1;TERF2DNマウスでは、ミクログリアが活性化してAβ貪食能が亢進している結果、脳内Aβプラークの形成が減少し、認知機能の低下が抑制されていると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナウイルス感染拡大に伴う緊急事態宣言の発出などにより研究活動が制限されたため、parabiosis実験など予定通りに進んでいない研究計画もある一方で、マウス個体の準備が予定以上に早くできたことで、次年度以降に予定していた認知機能の評価を今年度中に終了することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、ミクログリア活性化におけるSASPの関与、ミクログリアにおけるAβクリアランスに関わる分子の遺伝子発現、神経細胞の脱落やシナプス減少の有無、Aβプラークの形状などについて評価する予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症感染拡大に伴って緊急事態宣言の発出があり、勤務や所属ゼミ学生の研究活動に制限が生じため、研究計画を変更した。その結果、当初の予定よりも使用額が大きく減少した。変更した計画を次年度以降に実施することにより、使用する計画である。
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