2020 Fiscal Year Research-status Report
ドラッグ・リポジショニングを活用した大腸がん化学療法に伴う有害事象の回避法の確立
Project/Area Number |
20K07198
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
川尻 雄大 九州大学, 薬学研究院, 助教 (30621685)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小林 大介 九州大学, 薬学研究院, 講師 (00403973)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 抗がん薬 / 末梢神経障害 / 手足症候群 / オキサリプラチン / カペシタビン |
Outline of Annual Research Achievements |
オキサリプラチンによる末梢神経障害に対して、疎経活血湯が機械的アロディニアおよび低温知覚異常を一時的に改善する作用を有することがラットを用いた検討で明らかとなり、疎経活血湯が末梢神経障害の対症療法薬として有効である可能性が示唆された。またアミノ酸製剤であるシスチン・テアニンの反復投与は、オキサリプラチン誘発末梢神経障害ラットモデルにおいて、坐骨神経の変性(円形度の低下)および機械的アロディニアの発現を有意に抑制した。また同時に、坐骨神経における総グルタチオン量および還元型グルタチオン量の増加が確認されたため、抗酸化作用による神経保護作用が関与している可能性が示唆された。一方でC26(マウス大腸がん細胞)担癌マウスにおいて、シスチン・テアニンの投与は、オキサリプラチンの腫瘍増殖抑制作用に影響を与えなかった。シスチン・テアニンがオキサリプラチンの末梢神経障害の予防として有効な選択肢となりうる可能性が考えられる。 カペシタビンの手足症候群に対しては、プロトンポンプ阻害薬オメプラゾールが後肢皮膚の発赤、腫脹を改善する作用を有することがマウスを用いた検討で明らかとなった。その際、後肢における炎症性サイトカインTNF-αの上昇を改善していたため、抗炎症作用が手足症候群抑制作用に関与している可能性が示唆された。医薬品有害事象データベースであるFDA Adverse Event Reporting System (FAERS)の解析において、プロトンポンプ阻害薬の併用によりカペシタビンの手掌足底発赤知覚不全症候群(Palmar-plantar erythrodysesthesia)の報告が有意に少なくすることが明らかとなった(報告オッズ比(95%信頼区間):0.74(0.65-0.83), P<0.0001)。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
大腸がんの化学療法の有害事象のうち、オキサリプラチンの末梢神経障害に対しては、対症療法薬の候補として疎経活血湯が、予防薬の候補としてアミノ酸製剤シスチン・テアニンがそれぞれ基礎研究で同定された。また、カペシタビンの手足症候群に対しては、オメプラゾールなどのプロトンポンプ阻害薬が抑制効果を有する可能性が基礎研究と医療情報データベースの解析で明らかとなった。これらの成果はすでに論文3報や学会等で公表している。一方で、末梢神経障害の改善薬の評価を行うための、臨床での診療録の後方視的検討も、目標1,000症例のうち150症例の解析が終えている状況である。 これらの状況を鑑みると、予定していた計画と比較しても概ね順調に進行していると考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
2020年度まで概ね計画通り進行しているため、2021年度以降も当初の経過通り、研究を推進する方針である。引き続き、オキサリプラチンの末梢神経障害に関しては、動物・細胞モデルをもちいた神経障害の発現メカニズムの解明とそのメカニズムに基づいた改善薬の探索を行う。同時に、医薬品有害事象データベースの解析により神経障害に有効な可能性のある薬剤を細胞・動物モデルでその神経障害抑制作用を検証する。並行して、神経障害抑制薬がオキサリプラチンの抗腫瘍効果に影響しないか培養がん細胞や担癌動物を用いて検討する。さらに臨床における診療録の後方視的調査研究を継続する。カペシタビンの手足症候群も同様に、これまでに引き続き発現メカニズムの解明とそのメカニズムの基づいた改善薬の探索、医薬品有害事象データベースを用いた改善薬の探索を並行して行う予定である。最新の報告や臨床状況の変化等も反映しながら、適宜軌道修正をしながら進行していく予定である。
|
Research Products
(6 results)