2020 Fiscal Year Research-status Report
Multidimensional analysis of factors influencing the pharmacokinetics of the third-generation antiepileptic drugs
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20K07201
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
賀川 義之 静岡県立大学, 薬学部, 教授 (90397505)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山本 吉章 独立行政法人国立病院機構(静岡・てんかん神経医療センター臨床研究部), その他部局等, その他 (60596245)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 抗てんかん薬 / ペランパネル / 薬物間相互作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、第3世代抗てんかん薬に着目し、薬物間相互作用、薬物代謝・排泄関連タンパク質の遺伝子多型、性差、病態変化等の薬物動態影響候補因子を多面的に解析することで、抗てんかん薬の精密個別投与設計に寄与することを目的とする。我々は、これまでにCYP3A4/5の内因性活性マーカーである4β-hydroxycholesterol(4βOHC)を高精度に分離定量する方法を開発している。本実績の記載時点において、静岡てんかん・神経医療センターを受診した患者の血漿中ペランパネル濃度および血漿中4βOHC濃度を30例以上測定しており、その中間解析の結果を以下に示す。第3世代抗てんかん薬のペランパネルは、CYP3A4/5誘導薬であるフェニトイン、カルバマゼピン、フェノバルビタール併用群で、単独投与群に比べて血漿中濃度/投与量比(C/D比)が低下傾向を示しており、遊離形のC/D比も低下傾向を示し、一方血漿中4βOHC濃度は上昇傾向を示していた。また、ペランパネル等の代謝への影響が考えられるCYP3A5*3およびPOR*28の遺伝子多型解析も進行中である。CYP3A4/5誘導薬の有無に遺伝子多型を組み合わせた評価が最終的に必要になるが、現時点では症例数がまだ十分でなく、誘導薬の併用状況を考慮した遺伝子多型の解析は実施していない。誘導薬の有無を考慮しなかった場合、CYP3A5*3およびPOR*28の遺伝子多型による血漿中ペランパネルC/D比、遊離形ペランパネルC/D比および血漿中4βOHC濃度に顕著な影響はみられていない。今後さらに症例数を増やして、第三世代抗てんかん薬の血漿中濃度および4βOHCの血漿中濃度を測定するとともに、CYP3A5*3およびPOR*28の遺伝子多型や性ホルモンなど薬物動態に影響する因子を多面的に解析することで、抗てんかん薬の薬物間相互作用発現様式の解明に取り組んでいく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題において、シトクロムP450の代謝活性を評価する指標の血漿中4β-hydroxycholesterol(4βOHC)濃度測定は高い精度が求められる。申請者らが開発したキラル分離カラムとタンデム型質量分析計付高速液体クロマトグラフを用いて4αOHCと4βOHCを分離する方法により、4βOHC濃度を高精度に測定している。代謝酵素および排泄タンパク質の遺伝子多型検出法も確立している。本研究に関する研究倫理審査の承認を終え、研究が進行中である。これまでに血漿中ペランパネル濃度および血漿中4βOHC濃度測定は30例以上、CYP3A5*3およびPOR*28の遺伝子多型解析は20例以上で実施しており、おおむね順調に症例数が集積しつつある。血液検体中の性ホルモンについては卵胞ホルモンであるエストロゲンが重要であるが、タンデム型質量分析計付高速液体クロマトグラフを用いたエストロゲンの高感度測定法も構築が完了しつつある。難治性てんかんで併用される他の抗てんかん薬、臨床検査値および患者背景情報は医師カルテから適宜収集し、症例数が集まっている。本研究は我が国のてんかん治療の拠点である静岡てんかん神経医療センターとの共同研究であることから、症例数の確保に有利に働くと考えている。次年度以降はシトクロムP450阻害薬のスチリペントールなど他の第三世代抗てんかん薬の症例集積にも努めていく予定である。以上のような理由から、現在までの進捗に関して本研究は概ね順調に進行していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の遂行における重要な要因として、高感度の薬物およびホルモン血中濃度測定法の確立、動態関連遺伝子多型検出法の確立およびてんかん患者リクルートがあげられる。今後の研究の推進方策として、まず性ホルモンの血漿中濃度については、早めにタンデム型質量分析計付高速液体クロマトグラフを用いた高感度の血漿中濃度測定法を構築し、患者検体の測定を順次進めて行く。また、患者リクルートをさらに推進することで、てんかん症例数を蓄積しながら、血漿中ペランパネルの総濃度、遊離形濃度、血漿中4βOHC濃度および血漿中性ホルモン濃度等を測定していく。スチリペントールについては血漿中濃度測定法を確立した上で、服用症例のリクルートを強化し、ペランパネルと同様に、薬物血中濃度、血漿中4βOHC濃度および血漿中性ホルモン濃度等の測定を進めていく。症例数を蓄積していく中で、並行して薬物動態関連酵素CYP3A5*3およびPOR*28等の遺伝子解析を実施し、遺伝的要因の薬物動態への影響の検討を進める。このように、第三世代抗てんかん薬の血漿中濃度、遊離形濃度、血漿中4βOHC濃度、血漿中性ホルモン濃度、代謝および排泄に関与するタンパク質の遺伝子多型解析を推進していき、さらに併用薬や臨床検査値など患者背景を収集していく。このような推進策により、研究最終年度に向けて第三世代抗てんかん薬の薬物間相互作用発現機序を多面的に解析し、精密個別投与設計につなげていく。さらに、最終的な研究成果を原著論文として国際誌に公表することを目標にして研究を推進していく所存である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の影響などで、一部の第三世代抗てんかん薬の定量法構築が終了しなかったため、若干の使用残額が生じた。2021年度は定量法構築も含めて、確実に課題研究を推進していく。
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Research Products
(10 results)