2020 Fiscal Year Research-status Report
マイクロバイオームからひも解く難治性アトピー性皮膚炎の増悪機序の解明と疾患制御
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20K07208
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Research Institution | Meiji Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
張 音実 明治薬科大学, 薬学部, 特任研究員 (50573466)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | マイクロバイオーム / アトピー性皮膚炎 / マラセチア / 黄色ブドウ球菌 |
Outline of Annual Research Achievements |
難治性アトピー性皮膚炎患者に当該患者の非病変部より採取した適正マイクロバイオームを自家移植することで治療に資することが、本研究の最終目標である。そのために、本年度は1) 3次元ケラチノサイトモデルを用いて、アトピー性皮膚炎増悪マイクロバイオームの一つである真菌マラセチアの皮膚免疫応答の検討、2) アトピー性皮膚炎患者皮膚から新規に分離した増悪微生物のマイクロバイオームへの影響の2項目について検討した。1) 3次元ケラチノサイトモデルの作製:培養9日目から角層の形成と分化をHE染色および分化マーカーの検出から確認した。この構築されたモデルにマラセチアを添加し、24時間後の炎症性サイトカインと抗菌ペプチド産生を調べた。その結果、IL-8やHBD-2の産生が抑制されたことから本試験で作製した三次元培養表皮モデルはマラセチアの表皮バリアや皮膚免疫を検討できることが示された。次に、このモデルを用いて、マラセチアと細菌の増悪因子の一つである黄色ブドウ球菌を共培養し、RNA-seqによる網羅的遺伝子発現と炎症性サイトカイン産生について調べた。マラセチア存在下で黄色ブドウ球菌の病原因子関連遺伝子発現が減少し、また、黄色ブドウ球菌単独で誘導される炎症性サイトカイン発現はマラセチア存在下では抑制された。以上のことから、マラセチアはアトピー性皮膚炎の増悪にも抑制に寄与することが示唆された。2) 新規に分離した増悪微生物:当該微生物は分類学的にDelftia属菌と同定された。本菌は健常皮膚の主要構成菌種であるコアグラーゼ陰性ブドウ球菌の増殖を阻害することで黄色ブドウ球菌へのディスバイオーシスを誘導していると考えた。Delftia培養上清の曝露によってS. epidermidisの解糖系、及びTCA回路関連遺伝子の発現とROS産生の亢進が確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナ感染症の影響を大きく受けずに計画通り進行することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
三次元ケラチノサイトモデルを用いることで、よりin vivoに近似した皮膚環境を構築することができた。計画通りに、1) 増悪微生物と他のマイクロバイオームのネットワークの解析、2) 増悪微生物の炎症能力を沈静化させる正常微生物の選抜、を行うことにより破綻したマイクロバイオーム環境を再構築させる移植カクテルを作製する。
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Causes of Carryover |
網羅的遺伝子解析を複数回実施する予定であったが、新型コロナ感染症の影響により、必要な試薬の一部が輸入ができなかった。次年度には入手可能となっているので、最終的には大きな計画通の変更なく研究は遂行できている。
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