2020 Fiscal Year Research-status Report
Realization of precision medicine by constructing platform of dry powder inhaler formulation
Project/Area Number |
20K07212
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Research Institution | Osaka University of Pharmaceutical Sciences |
Principal Investigator |
門田 和紀 大阪薬科大学, 薬学部, 准教授 (50709516)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 吸入粉末剤 / 噴霧乾燥法 / 凍結乾燥法 / 粒子形態制御 / 実験計画法 / 肺胞 / フィトグリコーゲン |
Outline of Annual Research Achievements |
吸入粉末剤の適用において、粒子の肺内移行率向上と、各肺疾患に対する治療薬剤の目的部位への送達は重要な課題である。そのためには、各患者に対して肺内に効率的に移行する吸入粉末剤を設計し、肺内部での沈着場所を予測することが求められる。 本年度は、各患者に対して最適な粒子設計を行うために、噴霧乾燥法を利用して、吸入粉末剤の重要品質特性である、肺内到達量、粒子形態、水分含有量を管理するための操作パラメータを実験計画法に基づき変化させ、応答曲面法により最適化を行った。応答曲面として、中心複合計画である面心法を用いた。 吸入特性である、肺内到達率および肺深部への到達率に最も影響を及ぼすパラメータは噴霧乾燥法のガス流量速度であり、最も影響の小さいパラメータはInlet温度であると考えられる。さらに、Inlet温度は水分含有量とカプセルからの放出率、肺内部への到達率が相関していた。今回使用した、レボフロキサシンについては、抗結核治療薬として期待される。それゆえ、肺深部への到達率を高める条件とし、Inlet温度を120℃に固定し、Feed rate、ガス流量速度の最適値は応答により変化することが認められた。以上の結果より噴霧乾燥製造工程のパラメータにより、各種疾患に応じた吸入粉末製剤の設計が期待できる。 もう一つの課題である、肺疾患患者毎の肺構造ならびに呼吸パターンを考慮した数値シミュレーション解析では、日生病院の協力の下COPD患者のCT画像から、各個人における肺構造を作成し、それぞれの吸入パターンと数値シミュレーションによる計算での比較を実施した。結果として、患者毎で呼吸機能が異なり、肺構造の影響を受けることが確認できた。さらに、数値シミュレーションにより各患者の吸入パターンについて計算したところ、その肺構造の違いが吸入速度などに影響を与えていることが確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、以下の2つについての課題を進めている。 (1)空気力学的粒子径を制御した患者個別粒子設計・作製法の確立 (2)肺疾患患者毎の肺構造ならびに呼吸パターンを考慮した数値シミュレーション解析 課題(1)については、噴霧乾燥法を用いて、特に肺結核に対して、肺胞への到達性を高めた粒子の処方設計および噴霧乾燥の最適化を実現した。特に、モデル薬物として使用したレボフロキサシンについては、Inlet温度を固定し、噴霧乾燥のInlet温度とガス流量速度を変化させることで、吸入特性粒子を変化させることが可能となった。さらに、実験途中でこれまで使用していた一部の添加剤を用いて、噴霧乾燥条件を変化させたところ、リンクル構造を示す粒子形態が得られ、この添加剤と薬物を粒子として調製したところ、そのリンクル構造上に薬物粒子が存在した。その吸入特性によって調べられた肺胞到達性はこれまでにないくらいの高い値を示した。 一方、課題(2)については、数値シミュレーションを用いて、共同研究の日生病院から得た患者のCT画像に応じて、吸入パターンを変化させ、各場所での粒子径の違いについて解析した。患者によって異なる肺構造は粒子沈着場所にかなり影響があることが確認された。さらに、その吸入パターンを用いて様々な粒子径での沈着場所について解析を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
現在は、分子量の異なるデキストランを用いて、合剤の設計を行っている。実際、分子量が異なることで、溶液の物性(粘度および一次粒子径)が異なるため、噴霧乾燥した際の粒子形態が大きく異なる。この粒子形態の違いは、肺内部での沈着場所に大きく影響を及ぼすため、各疾患に応じて対象となる気管支や肺胞部位ヘの到達性を高めるための粒子設計を実施する。さらに、リンクル構造を持った粒子については、一部薬物の肺胞への到達性が非常に高いことを確認しているが、その粒子生成メカニズムについては今後の検討課題である。 また、数値シミュレーションにおいては、引き続き患者毎の吸入パターンを解析し、実際に肺のどの部分に空気力学的粒子径が到達するのかを解析し、粒子設計にフィードバックする予定である。
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Causes of Carryover |
昨年度はコロナの影響もあり、予想していた試薬や溶媒など消耗品の購入額が減少した。さらに、共同研究先および学会への旅費に関しては全く執行できなかった。一方で、検討中に新たなタイプの吸入粉末製剤設計法が確認できた。そのため、次年度はその製剤調製のために、実験計画法を用いて検討を予定しており、そちらの試薬および有機溶媒等の消耗品購入に充てたいと考える。さらに、Webによる国際学会への参加も予定しており、そちらの参加費などに予算を執行する予定である。
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Research Products
(6 results)