2021 Fiscal Year Research-status Report
Realization of precision medicine by constructing platform of dry powder inhaler formulation
Project/Area Number |
20K07212
|
Research Institution | Osaka Medical and Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
門田 和紀 大阪医科薬科大学, 薬学部, 准教授 (50709516)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 金属有機構造体 / シクロデキストリン / 噴霧乾燥法 / 肺疾患患者 / COPD / 数値シミュレーション / 吸入粉末剤 |
Outline of Annual Research Achievements |
吸入粉末剤の適用において、粒子の肺内移行率向上と、各肺疾患に対する治療薬剤の目的部位への送達は重要な課題である。そのためには、各患者に対して肺内に効率的に移行する吸入粉末剤を設計し、肺内部での沈着場所を予測することが求められる。 本年度は、粒子設計に関して、薬物の肺内移行率向上のための基剤として、金属有機構造体(MOF)を利用して、親水性および疎水性薬物に関わらず、吸入粉末製剤設計の実現への期待を見出した。MOFの中で、シクロデキストリン(CD)をリンカーとして調製したCD-MOFは安価で、高い生体分解性を示し、安全性が高いことから、製剤分野において注目されている。CDと金属イオンの配位結合でできるCD-MOFは独特な細孔構造を有し、親水性および疎水性薬物を同時に封入されることができる。CD-MOFを利用し、薬物を保持させ吸入粉末製剤としての調製を試みた。従来のCD-MOF調製方法として、蒸気拡散法が利用されているが、時間がかかり、効率的でない。貧溶媒晶析法及び噴霧乾燥法によって、薬物含有のCD-MOFを調製した。中でも噴霧乾燥法粒子は密度が低く球形であり、肺送達するのに適していることが確認でき、まずは吸入粉末製剤として、開発へのハードルが高いと思われる親水性薬物であるレボフロキサシンを用いてCD-MOFを吸入粉末製剤に適用した結果、親水性薬物にも関わらず肺内移行率が40%以上も実現できた。 もう一つの課題である、肺疾患患者毎の肺構造ならびに呼吸パターンを考慮した数値シミュレーション解析では、日生病院の協力の下COPD患者のCT画像から、各個人における肺構造を作成し、それぞれの吸入パターンと数値シミュレーションによる計算での比較を実施した。特に、COPDの重症度に応じて、患者間の肺構造に違いがあることが確認でき、それによって、粒子の肺内での挙動および沈着の違いが明らかとなった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題は以下2つの課題について検討を進めている。 1)空気力学的粒子径を制御した患者個別粒子設計および作製法の確立 2)肺疾患患者毎による肺内挙動粒子の沈着挙動解明 課題1)については、今年度新たに、シクロデキストリンー金属有機構造体を利用し、親水性を示す肺結核治療薬にも期待できるレボフロキサシンを用いて、粒子調製を実施した。その結果、特に噴霧乾燥法で作製したCD-MOFについては、レボフロキサシンを高用量で内包する粒子を作製することができ、また、比較的低密度で粒子径が小さい、空気力学的粒子径が小さい粒子を設計することが可能となった。この粒子設計は、今後他の薬物へ応用することが期待でき、さらに複数成分の粒子を含有することも期待できる。 一方、課題2)については、数値シミュレーションを用いて、異なるCOPD患者のCT画像から作製した肺モデルは、その重症度によって肺形状が異なり、そのため肺内部での粒子挙動および沈着についても各患者間で違いが明らかとなった。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度は、CD-MOFについては複数成分の薬物を含んだ形で粒子設計を行い、肺移行率について評価する。さらに、粒子設計については、凍結噴霧乾燥法での有機溶媒を使用しない、環境に対して優しい検討も実施しており、その粒子設計法(Ice-Template法)において、デキストランを用いることで粒子形態の制御が実現できそうであるので、実際に薬物を含有させ、肺内移行率の検討を実施する。また、水溶性高分子多糖類を利用することで、新たな粒子特性を持った粒子も作製に成功しているので、その粒子形成機構についての検討も実施する。 また、各患者から得られたCT画像について、3Dプリンタを用いて、模擬肺を作製し、数値シミュレーションとで得られた粒子挙動についての比較検討を実施する予定である。
|
Causes of Carryover |
コロナ禍の影響が続き、学会のWeb開催や共同研究先への出張を自粛したため、旅費についてはほとんど使用していない。しかし、本年度は国際学会への参加や共同研究先での物性測定なども予定している。また、本年度に新たな吸入粉末製剤のキャリアとして見出した、フィトグリコーゲンについては、その物性評価のためSpring-8などでの構造解析も予定しており、その検討費用を要すると思われる。
|
Research Products
(12 results)