2020 Fiscal Year Research-status Report
生体内に存在する多能性幹細胞(Muse細胞)の免疫拒絶反応回避機構の解明
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20K07219
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
黒田 康勝 東北大学, 医学系研究科, 助教 (00614504)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | Muse細胞 / 幹細胞 / 免疫寛容 / 再生医学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、最終目標としてMuse細胞の免疫拒絶回避機構を明らかにし、さらに免疫抑制剤を使用しない臓器移植法の開発への足掛かりを得ることを目的としている。
本年度は免疫抑制に重要な役割を果たすとされるヒト白血球抗原G (human leukocyte antigen-G, HLA-G)がMuse細胞に与える影響について解析するために、HLA-G promoterの下流にGFPを導入したMuse細胞を新たに作出した。これを用いて今後は分化に伴い消失すると想定されているHLA-Gの発現量と、その際のMuse細胞の生着率について動物モデルを用いて検討する。
また、特定の条件下においてMuse細胞が免疫系細胞とインタラクションしている可能性を示唆する結果を得た。並行してMuse細胞を先行投与することでAllogenicな組織の生着率が改善されることを示唆する結果も得られている。これらの知見はMuse細胞が、免疫抑制に非常に重要な役割を果たすとされている抑制性T細胞 (Regulatory T cell, Treg)や骨髄由来抑制細胞 (Myeloid-derived suppressor cell, MDSC)をはじめとする、免疫抑制にかかわるいずれかの細胞に働きかけ、自身への寛容を誘導している可能性が示唆されている。 これらのことを検討するため現在はより詳細な解析を進めており、今後のMuse細胞の新たな応用の可能性について検証を進めていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナ騒動で試薬や物品の欠品など予期していなかったトラブルに見舞われたものの、当初ある程度時間がかかると見積もっていたMuse細胞と免疫系細胞のインタラクションの検証や組織の生着率の検討などが前倒しで進み、最終的には予定していた計画通りに進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
基本的には現在の計画をそのまま進めていく。懸念点としてはMuse細胞が免疫抑制に非常に重要な役割を果たすとされるTregやMDSCを介した免疫抑制効果を示すか検討を進めていくが、通常、このような解析は遺伝的にTregまたはMDSCを欠損させたマウスを用いて行う。しかしながらいくつか報告されているTreg knockoutマウスはそのすべてが生後2週間程度で自己免疫疾患により死んでしまうため本研究には適さず、さらにはMDSCのknockoutマウスは報告されていない。そこで代替案として、IL-6がナイーブT細胞からTregへの分化を抑制する(Kimura et al., 2010)こと、またIL13と緑膿菌外毒素のrecombinant protein (IL13-PE38)によりMDSCが効果的に除去される(Nakashima et al., 2011)との報告を利用し、これらを事前投与したマウスをそれぞれ用意し、そこから損傷モデルマウスの作製を試みることで解決を図ることを検討している。
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Causes of Carryover |
本年度はコロナ騒動もあり、研究自体をはじめ試薬や機器の購入および納入に制限を受けたため、当初予定していたよりも使用額が少なかったが、次年度にはこの問題が解消されることを見込んでおり、本年度と次年度合わせて当初の計画通りに進めていくことを計画している。
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