2020 Fiscal Year Research-status Report
尾部退行症候群の理解に向けた分化決定因子Sox2及びTbx6の発現制御解析
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20K07226
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
下北 英輔 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学域), 助教 (70749134)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 尾部退行症候群 / Sox2 / Tbx6 / 体軸幹細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者はこれまでに、尾部胚葉形成における外胚葉および中胚葉の前駆細胞が異なる細胞系列であることを明らかにした。これらの異なる細胞系譜の前駆細胞は、共に外胚葉の分化に重要なSox2と中胚葉の分化に重要なTbx6を共発現している。本研究では、Sox2及びTbx6の発現がどのように制御され尾部胚葉形成が進むのかを明らかにすることが目標である。 本年度はSox2に関して重点的に研究を行った。Sox2の機能解析のために、shRNAや優勢阻害タンパクにより発現阻害を行ったところ、細胞死が誘導された。Sox2は外胚葉の分化だけではなく前駆細胞の維持に必要であるようであるが、本研究では前駆細胞が分化する段階を解析する必要がある。そこで、発現阻害のタイミングを意図的に変化させるためにCas13によるRNA分解技術をニワトリ胚の解析に導入することを試みた。 原理的には、薬剤依存的にCas13を発現させることで、内在性のRNAを時期特異的に分解できるはずである。まず、培養細胞を用いてCas13による発現阻害の効果を検証した。蛍光タンパクであるmCherryを発現阻害の標的としたところ、ヒト由来のHEK293T細胞では、guide RNAの違いにもよるが約50~70%の阻害効果が見られた。この値は参考文献と同様であった。しかし、ニワトリ由来のLMH細胞では、同じ操作を行ったにも関わらず阻害効果がほとんど見られなかった。標的遺伝子やguide RNAの変更を試みたが、結果は同様であった。また、Cas13やguide RNAの発現量を調べたが、HEK293TとLMHでは有意な差がなかった。よって、現時点では理由が定かではないが、Cas13はニワトリ細胞では機能しないことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
尾部前駆細胞の神経系への分化におけるSox2の機能解析のため、Cas13を用いて時期特異的な遺伝子発現阻害を試み、様々な条件で検証したが、いずれの場合もニワトリ細胞では阻害効果がほとんど見られなかった。原因は定かではないが、ニワトリ種特有の問題である可能性も考えられることから、他の方法を模索することも考えている。 一方で、並行して進めていたニワトリ胚を用いた実験では、独自に単離したエンハンサーを用いて様々なタイミングでSox2を強制発現させたところ興味深い結果が得られており、この結果を解析の糸口としたい。
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Strategy for Future Research Activity |
尾部の胚葉形成を解析するために尾部形成過程で発現する遺伝子のエンハンサーを多数単離しており、これらのエンハンサーを用いてSox2及びTbx6を発現させることによって解析を進めていく。 本年度用いたCas13がニワトリ細胞で機能しない原因が定かではないが、Cas13にも様々な細菌から単離されたものがあるので、入手できるものの中からニワトリ細胞でも有効なものがないか検討する。
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Causes of Carryover |
使用計画について翌年度分として請求した研究費と合わせて物品購入に使用する予定である。
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Research Products
(1 results)