2020 Fiscal Year Research-status Report
Analysis of hierarichical regulation in layerI GABAergic Neurons
Project/Area Number |
20K07227
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
江角 重行 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 講師 (90404334)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 大脳皮質 / LayerI / GABAergic Neuron / 抑制性ニューロン / VGAT |
Outline of Annual Research Achievements |
哺乳類の高次脳機能を担う大脳皮質は興奮性のグルタミン酸ニューロンと抑制性のGABAニューロンの二種類の神経細胞によって支えられており、6層構造を持つ。その中で分子層と呼ばれるI層ではグルタミン酸ニューロンの細胞体は存在せず、水平方向に密に張り巡らされた尖端樹状突起網のみ存在する。一方で、I層には特徴的なGABAニューロンが存在し、グルタミン酸ニューロンの樹状突起末端部に対して、多数の抑制性シナプスを形成している。最近の報告で、このI層GABAニューロンが発達期に同期発火していることや、感覚野バレル形成や高次脳機能に関わることが明らかになった。これまでの報告やI層におけるGABAニューロンとグルタミン酸ニューロンとの結合様式から、大脳皮質I層GABAニューロンは、生後発達期や臨界期において、ノイズ除去などの機能を階層的に制御していると考えられるが、そのメカニズムは未解であった。本研究は、大脳皮質I層GABAニューロンに着目して、グルタミン酸ニューロンとの相互発達過程や階層的発達過程を解析し、その分子基盤を明らかにすることを目的として研究を進めている。具体的には、GAD67-CrePR/Nkx2-1Cre/Nkx2-1CreERマウスを用いてGABAを放出するために必須であるvesicular GABA transporter (VGAT)を時期特異的にGABAニューロンの一部の細胞で欠損させて解析を行っている。令和2年度は、生後0日目大脳皮質の細胞を単離し、10x Chromium によるSingle-cell RNA-seq 解析を行い、VGATの欠損がGABAニューロンやグルタミン酸ニューロンの発生発達にも大きく影響を与えていることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
最近、GABAが神経細胞の活動電位を抑制するだけでなく、成体ラットにおいてグルタミン酸ニューロンに対するシナプスの選別や除去に関わる(Hayama et al,2013,Nature Neurosci.)ことや、発達期にシナプス形成に関わること(Chattpadhyaya B et al, 2007, Neuron)が明らかになってきた。さらに最近、発達期のI層GABAニューロンがバレル野の形成に関わること(Che A et al.,Neuron, 2018)が報告されたが、GABAニューロンの階層的な発達制御機構の詳細は未解であった。最近の予備的な実験で、生後初期から長期的にGABA放出停止を起こしたニューロンは、顕著に樹状突起が退縮することを発見した(2018解剖学会総会, 2018日本神経科学会大会)。この結果は、GABAを分泌する機能的な抑制性シナプスが回路形成や維持に必須であることを示唆している。令和2年度は、大脳皮質発生発達過程におけるVGAT欠損の影響を階層的に調べるために生後0日目のNkx2-1Cre; floxed-VGAT homo/hetero R26-TdTomatoマウスの大脳皮質の細胞を単離し、10x Chromium によるSingle-cell RNA-seq 解析を行った。単一細胞遺伝子発現プロファイルに含まれる大脳皮質層特異的発現遺伝子群によってクラスターを分類して、解析を行ったところ、VGAT欠損マウスではグルタミン酸ニューロン群だけでなく、GABAニューロン群の遺伝子発現プロファイルが大きく変化していた。分類したクラスター群には、NdnfやReelinを発現する大脳皮質I層GABAニューロンと考えられる細胞群も含まれているため、現在、詳細な解析を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度以降は、GAD67-CrePR/Nkx2-1Cre/Nkx2-1CreER floxed-VGAT; Rosa26- floxed- tdTomatoマウスにごく少数だけを強い緑色蛍光で標識することができる、スーパーノヴァ(ベクター)をウイルス(AAV)によって、グルタミン酸ニューロンに導入して、I層GABAニューロンとグルタミン酸ニューロンそれぞれの形態変化やシナプス形成過程を明らかにする。PV陽性ニューロンやシャンデリアニューロンなどの他階層とのシナプス形成については、AnkG(軸索マーカー)やPV, VGATなどを含めた3重免疫組織化学染色で解析する。この実験は、生体脳のイメージング解析が専門でスーパーノヴァ法を開発した熊本大学IRCMSの水野秀信准教授との共同研究で進める。また。シナプスレベル構造変化は、研究代表者の所属する研究室の福田孝一教授に技術的な助言を受けながら電子顕微鏡を用いて行う。またSingle-cell RNA-seq解析によって得られた結果から、大脳皮質I層GABAニューロンの抑制性シナプス形成に関わる遺伝子を探索し、その機能を探る予定である。
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Causes of Carryover |
次年度使用額への繰越は、大脳皮質I層の抑制性神経細胞サブタイプを同定するための抗体を購入するために使用する。次年度は、組織解析実験、動物飼育費用、論文出版費用、大阪で行われる第127回日本解剖学会総会・全国学術集会への参加、発表費用に予算を使用する予定である。
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