2021 Fiscal Year Research-status Report
Analysis of hierarichical regulation in layerI GABAergic Neurons
Project/Area Number |
20K07227
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
江角 重行 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 講師 (90404334)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 大脳皮質 / GABAニューロン / GAD67 / 抑制性神経 / 脳障害モデル / 神経発生 / 細胞系譜 |
Outline of Annual Research Achievements |
哺乳類の高次脳機能を担う大脳皮質は興奮性のグルタミン酸ニューロンと抑制性のGABAニューロンの二種類の神経細胞によって支えられており、6層構造を持つ。興味深いことに、大脳皮質I層には、興奮性グルタミン酸ニューロンは存在せず、抑制性GABAニューロンのみ存在する。この大脳皮質I層GABAニューロンは、生後発達期や臨界期において、ノイズ除去などの機能を階層的に制御していると考えられるが、そのメカニズムは未解であった。私達はこれまでに分裂能を持ったGAD67陽性大脳皮質GABAニューロン前駆細胞(GABAergic Neuron Intermediate Progenitors)が存在することを明らかにしてきた。また、最近の解析で、この細胞群から、ごくわずかな(<1%)はグリア細胞が生じていることが示された。私達は、大脳皮質I層に存在するGAD67陽性GABAニューロン前駆細胞が、環境や障害時になどにグリア細胞に分化する能力を持っているのではないかと考え、時期特異的にGAD67陽性細胞をラベルすることができるGAD67-CrePR;floxed-VGAT; Rosa26-floxed-TdTomatoマウスを用いて、生後発達期に脳障害を与えた際のGAD67陽性細胞の動態を観察することにした。具体的には、生後0日目にMifepristoneを投与しGAD67陽性細胞をラベルし、生後1日目に片側の大脳皮質に凍結脳損傷を与え、生後2日目-3週齢にEdUを連続投与したマウスを解析した結果、P0でラベルされたGAD67+系譜細胞の一部が損傷部でNeuN(-)の細胞に分化していることが示された。現在、この細胞種や動態についての解析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
大脳皮質は記憶、認知、判断といった高次脳機能が発現されるきわめて重要な働きを担う部位である。これらの機能は、興奮性のグルタミン酸ニューロンと抑制性のGABAニューロンの二種類の細胞によって支えられている。通常のマウスの脳発生では、大脳皮質のGABAニューロンは主に内側/尾側基底核原基に由来しており、産生されたGABAニューロンは、接線方向に移動して大脳皮質に加わる。大脳皮質は6 層構造を持ち、層の厚さは領野ごとに異なるが、どの皮質領域でも共通の層構造を持つ。それぞれの層では、固有の役割を持つグルタミン酸ニューロンやGABAニューロンが多階層的に分布してシナプスを作ることで、脳の高次機能が成り立つが、大脳皮質I層にはGABAニューロンしか存在しない。私達の最新の研究成果から、大脳皮質I層に存在するGAD67陽性GABAニューロン前駆細胞が、環境や障害時になどにグリア細胞に分化する能力を持っているのではないかと考え、時期特異的にGAD67陽性細胞をラベルすることができるGAD67-CrePR;Rosa26-floxed-TdTomatoマウスを用いて、生後発達期に脳障害を与えた際のGAD67陽性細胞の動態を観察することにした。具体的には、生後0日目にMifepristoneを投与しGAD67陽性細胞をラベルし、生後1日目に片側の大脳皮質に凍結脳損傷を与え、生後2日目-3週齢にEdUを連続投与したマウスを解析した結果、P0でラベルされたGAD67+系譜細胞の一部が損傷部でNeuN(-)の細胞に分化していることが示された。現在、この細胞種や動態についての解析を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
私達は、これまで、大脳皮質I層GABAニューロンの階層的制御機構のメカニズムを遺伝子改変マウスを用いて解析を行ってきた。最近の遺伝子改変マウスを用いた結果から、生後初期に大脳皮質I層に存在するGAD67陽性GABAニューロン前駆細胞が脳障害を受けた際に別の細胞種に分化する可能性が示唆された。この結果は、当初の計画では予想することができなかった興味深い結果であり、脳障害時の新しい治療方法の開発につながる可能性もある。 令和4年度は、この現象と分化した細胞群の性質を詳細に調べるために一部、研究計画の修正を行う。時期特異的にGAD67陽性細胞をラベルすることができるGAD67-CrePR;Rosa26-floxed-TdTomatoマウスを用いて、生後発達期に脳凍結脳障害を与えた際の大脳皮質I層のGAD67陽性細胞の形態変化や細胞運命転換の動態を3重免疫組織化学染色や、成体脳イメージングを行って解析する予定である。さらに大脳皮質I層GABAニューロンの階層的発達制御機構が脳損傷時にどのような可塑性を示すか調べるため、マウス成体脳を用いて同様の実験を行う予定である。研究が進展する場合はRNA-seqを試みることで変動する遺伝子群を明らかにし、そのメカニズムを明らかにする予定である。
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Causes of Carryover |
最近の結果で、大脳皮質I層に存在するGAD67陽性GABAニューロン前駆細胞が脳障害を受けた際に別の細胞種に分化する可能性が示唆された。令和4年度は、時期特異的にGAD67陽性細胞をラベルすることができるGAD67-CrePR;Rosa26-floxed-TdTomatoマウスを用いて、生後発達期に脳凍結脳障害を与えた際の大脳皮質I層のGAD67陽性細胞の形態変化や細胞運命転換の動態を3重免疫組織化学染色や、成体脳イメージングを行って解析する予定である。この実験に用いる試薬や免疫組織化学染色に予算を用いる。また、本研究を迅速に研究を進め論文出版するために、論文出版費用(オープンアクセス費用)を含め令和3年度に前倒し請求を行ったが、令和3年度には論文出版には至らず、令和4年度に引き継ぐこととなった。そのため、次年度使用額が生じた。令和4年度は上記の研究を進め、論文を出版するために予算を使用し、研究目的の達成を目指す。
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