2021 Fiscal Year Research-status Report
大動脈-生殖腺-中腎領域における還流路形成の時空間的解析
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20K07229
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Research Institution | Iwate Medical University |
Principal Investigator |
村嶋 亜紀 岩手医科大学, 医学部, 助教 (50637105)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 中腎 / 下大静脈 / 血管形成 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度に行った、静脈形成と周辺器官発生に関する4次元的解析や、中腎上皮特異的細胞除去マウス(Hoxb7Cre;ROSA-DTA)の解析から、中腎は原始静脈の正中吻合や下大静脈の形成に寄与していないことが明らかとなった。哺乳類胚において一過性に発生する中腎の発達度合は種によって大きく異なり、マウスではヒトに比べてもその発達が乏しいことが報告されており、マウス胚のみを用いて普遍的な原始静脈発生を議論することには留意が必要である。そこで、中腎の発達が著しい両生類(Hynobius lichenatus)において、哺乳類の正中吻合部を形成するといわれている主下静脈と中腎の発生に関して連続切片による3次元再構築と樹脂鋳型による3次元解析を行った。その結果、Hynobiusにおいて中腎管に沿って腹外側に形成される後主静脈に対して、中腎静脈洞を挟んで腹内側に形成される主下静脈は、中腎に属する門脈として発生することが確認された(投稿準備中)。この定義をもとに、マウスの主下静脈を再度同定したところ、主下静脈はマウスにおいて中腎頭部にわずかに形成されるのみであり、その頭側部より傍大動脈領域に新たな静脈洞を形成し、後に左腎静脈の形成に寄与することがわかった。これらの結果からマウスにおいて左右の原始静脈吻合を主下静脈に代わって制御する新たな静脈洞が定義された。さらに、薬剤誘導型VE-cadherin発現細胞標識マウスを用いてこの静脈洞領域における血管内皮細胞の系譜を解析したところ、後主静脈などの原始静脈に由来しない血管内皮細胞が下大静脈腎部形成に寄与している可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
野生型マウスにおける静脈発生に関しては、免疫染色による血管内皮細胞や周辺組織の標識と併せた静脈発生の細胞レベルの詳細を時空間的に解析することができた。一方、既存の文献では原始静脈系の定義に議論の余地があったため、Hynobiusを用いて原始静脈系と周辺器官の発生を記載し、再定義を行った(投稿準備中)。また、当初の予定通りVE-cadherin発現細胞標識マウス(Cdh5CreERT2;ROSA-tdTomato)胚を用いて下大静脈を構成する血管内皮細胞系譜の解析が進行中である。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度までの解析で主下静脈より独立した新たな静脈洞が左右原始静脈系の正中吻合を形成することが示唆された。今年度はこの領域特異的遺伝子改変マウスを導入し、下大静脈形成に与える影響を解析する。
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Causes of Carryover |
初年度に購入予定であったソフトウエアと同等の解析が代替品により可能となったため、前年度に続き繰越金が発生している。一方で研究の進展に伴い、今年度からは解析をより加速させるために一部を人件費として使用しており、次年度末まで安定して使用するために一定の金額を繰り越した。加えて当初の予定より多くの遺伝子改変マウスの解析を行う可能性が出てきたため、この予算に充てる。
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Research Products
(2 results)