2022 Fiscal Year Research-status Report
大動脈-生殖腺-中腎領域における還流路形成の時空間的解析
Project/Area Number |
20K07229
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Research Institution | Iwate Medical University |
Principal Investigator |
村嶋 亜紀 岩手医科大学, 医学部, 講師 (50637105)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 中腎 / 遺伝子改変マウス / 血管発生 / 比較発生学 / 解剖学 |
Outline of Annual Research Achievements |
下大静脈の形成は、原始静脈系の吻合・偏位・消退によって構成されることが広く知られているが、これは組織学的解析からの推察を基にしており、周辺組織の発生を加味した3次元イメージング解析は現在まで行われていない。本研究は、最新のイメージング技術、遺伝子改変マウスを駆使して、静脈形成を時空間的に捉え、さらに従属する器官の発達・退縮と連関して解析する。特に、左右対称に発生する原始静脈の正中吻合部位を再検討するとともに、その起源となる血管叢の従属器官を明らかにし、解剖学的に定説と考えられていた下大静脈の起源を改めて問う。前年度までに、両生類(Hynobius lichenatus)を用いて体幹還流路形成に寄与する主下静脈の比較発生学的再定義を行うとともに、マウスにおける体幹還流路形成と周辺器官発生に関する4次元的解析を行った。その結果主下静脈はマウスにおいて中腎頭部にわずかに形成されるのみであり、その頭側部より傍大動脈領域に新たな静脈洞を形成し、後に左腎静脈の形成に寄与することがわかった。今年度はこの傍大動脈領域に形成される副腎および傍神経節に着目し、遺伝子改変マウスを導入し還流路形成に与える影響を解析した。副腎髄質および傍神経節欠損マウス、副腎皮質欠損マウスをそれぞれを導入し、各ステージごとに胚を採集し、連続切片による3次元再構築を行った。その結果、いずれのマウスにおいても左右原始静脈の吻合形成に遅れが認められ、特に副腎皮質欠損マウスでは野生型に比べ、吻合の低形成と遅れが顕著であった。これらの結果から、原始静脈の左右吻合に副腎および傍神経節内に作られる静脈洞が寄与する可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度までに行った、両生類(Hynobius)による周辺組織の発生を加味した原始静脈系の再定義について論文としてまとめることができた(投稿中)。また、当初の実験計画どおり、原始静脈の左右吻合における責任器官候補として傍大動脈組織を同定し、傍大動脈組織に形成異常を示す遺伝子改変マウスの導入とコロニーの拡大、解析サンプルの採集と解析まで行うことができた。傍大動脈領域は性質の異なる2つの組織で構成されるため、現在、傍大動脈組織を完全に欠損させるための重複遺伝子欠損マウスを作成中であり、来年度はこれを解析して結果をまとめる予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
原始静脈系の左右吻合を形成する責任器官の機能解析を今年度も引き続き行う。副腎皮質欠損マウスおよび副腎髄質、傍神経節欠損マウスの単独ノックアウトマウスの解析では、吻合形成に異常が見られたが、吻合の無形成には至らなかった。そのため、これらの単独ノックアウトマウスを交配させ、重複ノックアウトマウスを作成し、傍大動脈組織の欠損を誘導するとともに、左右原始静脈系の正中吻合形成について連続切片からの3次元再構築を行う。得られた結果から、正中吻合形成における傍大動脈組織の形態学的および分子生物学的機能についてまとめ、報告する。
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Causes of Carryover |
初年度に購入予定であったソフトウエアと同等の解析が代替品により可能となったため、繰越金額が発生している。本年度は人件費およびマウス導入にかかる費用によって当初の予定以上に使用額が発生したが、これに伴い解析が飛躍的に加速した。その結果、重複ノックアウトマウス作成の必要性が出てきたため、次年度に一部予算を繰り越した。現在交配を重ね、重複ノックアウトマウスを作成中であり、この解析と論文発表のために使用する。
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Research Products
(1 results)