2021 Fiscal Year Research-status Report
オリゴデンドロサイト機能異常が惹起するp53誘導性神経変性機構の分子基盤解明
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20K07241
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
備前 典久 新潟大学, 医歯学系, 助教 (40751053)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | オリゴデンドロサイト / p53 / グリア / 神経変性 / グリア-ニューロン相互作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、RNAヘリカーゼObp2の成熟オリゴデンドロサイト(OL)特異的欠損マウス(Mbp-Cre;Obp2 cKOマウス)の解析で我々が見出した、明確なOL分化異常を伴わずにニューロン内のp53経路活性化および神経変性を引き起こすメカニズムの解明を通して、OL-ニューロン相互作用のさらなる理解を目指す。 今年度は、前年度行ったRNA-seqの結果をもとに、さらなるOLとニューロン双方の表現型解析を行った。ニューロンにおいてはシナプス関連遺伝子群の発現低下および神経活動マーカーのc-fosやArcの発現低下が認められた。一方、オリゴデンドロサイトではDNA損傷の蓄積やp21の発現亢進が認められたほか、コレステロール合成関連遺伝子や脂質メディエーター関連遺伝子の発現低下が生じていた。RNA-seqの解析から、DNA修復関連遺伝子のスプライシング異常が多数検出され、DNA修復機構の破綻がDNA損傷蓄積の原因の1つである可能性が考えられた。さらに興味深いことに、Obp2欠損OLで顕著に減少する脂質メディエーター関連分子の発現を制御するシグナルのエフェクター分子と、Obp2が相互作用することを免疫沈降で確認した。これらの結果は、Obp2欠損OLではOL関連遺伝子発現の低下に先駆けて、ゲノムの不安定化や代謝異常が生じており、これがニューロン内のp53の蓄積や神経変性の要因となる可能性が示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Opb2欠損マウスにおけるオリゴデンドロサイトとニューロンの表現型と分子背景をより詳細に把握することができ、オリゴデンドロサイト-ニューロン相互作用の候補経路を絞り込むことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度にObp2欠損OLで顕著に発現が減少することを見出した脂質メディエーター関連分子のOL特異的ノックアウトマウスをすでに導入しており、このマウスのOLおよびニューロンにおける表現型を調べることでOL由来脂質メディエーターによるニューロンへの影響を調べる。さらに、Obp2によるDNA損傷関連遺伝子のスプライシングや脂質メディエーター経路の制御機構を解明する。 また、Obp2欠損OLが老化のような表現型を示していることから、細胞老化特有の分子背景をより詳細に解析する。Plp-CreER;Obp2欠損マウスを用いて、成体期OLにおいてObp2を欠損した際のOLやニューロンの表現型を解析する。
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Causes of Carryover |
Obp2欠損OLとコントロールOLを用いたRNA-seqをする予定であったが、Obp2遺伝子の組換えを確実に担保するためのfloxed RFPレポーターマウスとの掛け合わせが遅れたために今年度中にRNA-seqを行うことができなかった。現在は順調に掛け合わせが進んでおり、次年度にRNA-seqを行える予定である。
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