2020 Fiscal Year Research-status Report
新しい遺伝子改変マウスを用いた脳神経小胞でのV-ATPaseの機能解析
Project/Area Number |
20K07243
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Research Institution | Hamamatsu University School of Medicine |
Principal Investigator |
青戸 一司 浜松医科大学, 医学部, 助教 (60360476)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 小児難治性てんかん原因遺伝子 / V-ATPase / ATP6VA1 / 小胞(リソソーム・シナプス小胞) / Atp6v0a1-A512Pマウス / TetON3G-Creマウス / Atp6v0a1-floxマウス / Atp6v0a1-3xHAマウス |
Outline of Annual Research Achievements |
最近、申請者らはてんかんの原因遺伝子としてATP6VA1の p.A512P変異を見出した。ATP6V0A1はプロトンポンプであるV-ATPaseの構成サブユニットの1つである。培養細胞の解析から、V-ATPaseは、小胞(リソソーム・シナプス小胞)で発現し、小胞内のpH調節、細胞死制御、オートファジー、mTorシグナル制御などに関与することが明らかになっているが、有用なマウスモデルがないため、脳神経でのV-ATPaseの機能は十分にわかっていない。本研究では、以下の3つの変異マウスを用いた解析によって、脳神経の小胞におけるV-ATPaseの生理的役割、及び、小胞の形成・維持に関与する分子群を明らかにする。 A)変異ノックインマウス (Atp6v0a1A512P): 小児の難治性てんかん患者で同定された原因遺伝子変異(A512P)を導入したマウスの解析により、発生期の脳神経細胞のリソソームでのV-ATPaseの機能を明らかにする。 B)薬剤投与で遺伝子欠損を誘導可能なマウス (TetONマウス:TetON3G-Cre; Atp6v0a1flox): 成獣において薬剤投与で遺伝子欠損させることで、成熟した脳神経細胞のシナプス小胞でのV-ATPaseの機能を明らかにする。 C)Atp6v0a1のC末端に3xHAタグを挿入したマウス (Atp6v0a13xHA): HAタグに対する免疫沈降によってAtp6v0a1を発現する小胞を単離できる方法(Vesicle-IP法)でプロテオーム解析を行い、V-ATPaseを発現する小胞の形成・維持に関与する分子群を同定する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
てんかん性脳症の原因遺伝子として、細胞内小胞(小胞体、シナプス小胞、リソソーム)の膜に発現し、プロトンポンプであるV-ATPaseの構成サブユニットの1つであるATP6VA1のp.A512Pを含めた4変異を見出した。これらA512P変異マウス(Atp6v0a1A512P)、R741Q変異マウス(Atp6v0a1R741Q)及びノックアウトマウス(Atp6v0a1KO)を作製して解析を行い、リソソームなどの小胞内のpH調節の異常、細胞死制御、オートファジー、mTorシグナル制御などに関与することを明らかにし、論文として発表した(Aoto, Nature communications, 2021年4月)。この結果は、令和2年度のAtp6v0a1A512Pホモマウスの脳神経での表現型解析の目的を達成していることになる。また、A512P変異マウスがてんかん性脳症の良いモデルマウスになることを示した。 また、変異マウス作製法として、妊娠が確定した雌マウスの卵管膨大部にCRISPR-Cas9の溶液を注入し、エレクトロポレーションによって受精卵のゲノムに変異を与える方法(i-GONAD法)を用いている。これまでこの方法で50系統以上の変異マウス作製ができている。このi-GONAD法を用いて、Atp6v0a1のコンディショナルノックアウトマウス(Atp6v0a1flox)とAtp6v0a1のC末端に3xHAタグを挿入したマウス(Atp6v0a13xHA)を作製も順調にできつつある。 TetON3G-Creマウスは、ターゲティングベクター作製が終了した。しかしながら、マイクロインジェクションを用いたゲノム編集によるRosa26領域へ挿入が必要であるため、条件検討中である。
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Strategy for Future Research Activity |
Atp6v0a1のコンディショナルノックアウトマウス(Atp6v0a1flox)と交配予定であるTetON3G-Creマウスの作製が遅れているために、他のCreマウス等の使用を考えた。研究室ですでに持っている神経堤細胞特異的に発現するWnt1-Creマウスとの交配、あるいは、静脈投与によるアデノ随伴ウイルス(AAV)の脳神経への感染システムを用いて細胞・組織特異的にAtp6v0a1の遺伝子欠損が行えないかどうかの検討を始めた。 Atp6v0a1のC末端に3xHAタグを挿入したマウス(Atp6v0a13xHA)に対しては、小胞タンパク質がうまく単離同定ができないことも考慮して、C末端に蛍光タンパク質(mClover2)や3xHAタグを挿入したヒト神経芽細胞(SH-SY5Y)の作製にも取り掛かった。これらの細胞は後ほど、同じようにVesicle-IPによる小胞タンパク質の単離同定ができるだけでなく、分化させた神経細胞での局在変化も観察できる。
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Causes of Carryover |
昨年度より本年度の使用予定額が上まわったのは、研究の予定に変更があったためである。昨年度は新規変異マウス作製方法i-GONAD法を用いたため、作製にかかる費用が抑えられたためである。本年度は、引き続き作製を行うのと、作製できたマウスの表現型解析のために、遺伝子判定試薬、抗体関連試薬、細胞培養関連試薬、イメージング試薬などを購入するために使用予定額が多くなる予定である。
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Research Products
(4 results)
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[Journal Article] ATP6V0A1 encoding the a1-subunit of the V0 domain of vacuolar H+-ATPases is essential for brain development in humans and mice2021
Author(s)
Aoto K, Kato M, Akita T, Nakashima M, Mutoh H, Akasaka N, Tohyama J, Nomura Y, Hoshino K, Ago Y, Tanaka R, Epstein O, Ben-Haim R, Heyman E, Miyazaki T, Belal H, Takabayashi S, Ohba C, Takata A, Mizuguchi T, Miyatake S, Miyake N, Fukuda A, Matsumoto N, Saitsu H
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Journal Title
Nature Communications
Volume: 12
Pages: 2107
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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