2022 Fiscal Year Research-status Report
低酸素シグナルを感知する下垂体前葉細胞の同定と内分泌機能の制御機序の解明
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20K07249
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Research Institution | Kanagawa University |
Principal Investigator |
藤原 研 神奈川大学, 理学部, 教授 (00382945)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 低酸素 / 下垂体前葉 / 細胞間相互作用 / 局所環境 / ラット |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は①低酸素応答細胞の組織学的解析、②低酸素シグナルを介する細胞間相互作用、③低酸素シグナルによる細胞機能調節、について解析する。2021年度にラット下垂体腫瘍から樹立された成長ホルモンとプロラクチンを産生する細胞株であるMtT/SM細胞を下垂体前葉細胞のモデルとして、低酸素培養条件の確立と発現遺伝子解析を行った。本年度は、その条件を用いて、ラット下垂体前葉の初代培養細胞系で正常細胞での低酸素応答遺伝子の同定を行った。まず、成獣雄ラットの下垂体前葉を摘出し、トリプシン、コラゲナーゼ、EDTA処理により単離細胞を得た。細胞を35 mmシャーレに播種し、通常酸素濃度で48時間の培養を行い、その後通常酸素濃度または10%酸素濃度それぞれで24時間の培養を行った。細胞からRNeasy Mini kitを用いてRNAを抽出した。このRNAを鋳型として逆転写反応によりcDNAを合成し、PCRを行ったところ、通常酸素濃度および10%酸素濃度で培養したいずれでもHIF-1αが発現していることが確かめられた。続いて、上記の酸素濃度条件下で下垂体前葉単離細胞を培養したのち、それぞれの酸素濃度で発現する遺伝子をRNA-seq解析で比較した。RNA-seq解析は日本ジーンウィズ社に委託した。その結果、10%酸素濃度で培養することで通常酸素濃度培養よりも2倍以上有意に増加するもしくは減少する遺伝子を同定することに成功した。今後、これら遺伝子が下垂体前葉のどのような細胞種で発現し、低酸素条件下で下垂体細胞の機能にどのような役割があるかを調べる必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度はCOVID-19感染の対応により研究試薬や機器の調達に遅れが生じた。また、所属学部のキャンパス移転があり、2022年12月から2023年3月の期間で研究室および共通実験室を閉鎖したため、実験を停止せざる終えなかった。このような状況で、計画していた研究を十分に進めることができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までの研究進捗状況にやや遅れが生じているが、計画研究の大きな変更はない。2021年度にin vitroで低酸素環境を作ることが可能な培養器を用い、下垂体前葉の株化細胞を使って低酸素環境下での発現遺伝子をRNA-seq解析により解析することができた。2022年度に、ラット下垂体前葉の初代培養細胞系を用いて同様の実験をおこなうことができ、正常な細胞を低酸素濃度で培養した際の発現遺伝子をRNA-seqにより明らかにした。今後は、これまで得られた株化細胞と初代培養細胞とで低酸素に応答する遺伝子群を解析していく予定である。
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Causes of Carryover |
COVID-19感染拡大により研究機器や実験試薬の調達が遅れたため、予定していた実験が進まなかった。また、所属学部のキャンパス移転があり、移転期間中は研究室および共通実験室を閉鎖したため、実験を停止せざる終えなかった。本年度に使用できなかった予算は、引き続き次年度の物品費及び学会発表旅費に使用する計画である。
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Research Products
(15 results)