2021 Fiscal Year Research-status Report
副甲状腺の機能維持に関わる新たな細胞(PMCs)の同定と腺構成細胞の再検討
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20K07252
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Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
辰巳 徳史 東京慈恵会医科大学, 医学部, 助教 (60514528)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 副甲状腺 / 細胞増殖 / 機能維持 / シングルセルトランスクリプトーム / Gcm2 |
Outline of Annual Research Achievements |
計画していたシングルセルトランスクリプトーム解析の準備として、昨年度MMRRCより凍結胚としてGcm2-EGFPマウスを購入し、本年度6月に理研BRCより生体を得ることができた。ジェノタイプを行い、それらの個体が本当に副甲状腺をEGFPで可視化できるのかを解剖し観察したところ、甲状腺内にEGFP蛍光を示す副甲状腺が確認できた。通常の視野下では甲状腺内にある副甲状腺を同定することは困難なため、このマウスは副甲状腺の解析に非常に有用であることが明らかとなった(一部の解析データは第127回日本解剖学会総会・全国学術集会にて当講座主任教授である岡部正隆が発表)。 シングルセルトランスクリプトームでは細胞をバラバラにし、1細胞になるよう調整が必要である。そこで、これまで報告されている、様々な組織の細胞調整法を参考にプロトコルを作成し、蛍光顕微鏡下で単離した副甲状腺細胞を酵素処理して1細胞にすることを試みたが、副甲状腺はタイトな結合組織に囲まれており、通常の酵素処理では組織をバラバラにできないことが明らかとなった。そこで、副甲状腺用の新たな方法を検証し、8週齢までのマウスを使用することで、比較的高効率に副甲状腺を1細胞へバラバラにできる方法を確立した。若齢の副甲状腺のほうが細胞をバラバラにするのは容易だが、好酸性を示す副甲状腺細胞は成長とともに現れることから、細胞の単離時期についてもっとも適切な時期がいつであるかを検証する必要があることも明らかになった。 Gcm2-EGFPマウスの副甲状腺のEGFPの免疫組織化学染色より、すべての副甲状腺細胞が一様にEGFPを発現するわけではないことが明らかになった。これはGcm2抗体を用いた染色結果とも類似しており、Gcm2発現細胞の強弱がPMCsと関連がある可能性も示唆され、その点についてもシングルセルトランスクリプトーム解析結果によって明らかになることが想定された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナの影響を受け、当初より使用するマウスを得るのに時間がかかっていたが、さらにシングルセルトランスクリプトーム調整に必須の試薬にも影響があり入手に時間がかかったことにより、当初の計画より、半年-1年の遅れが出ている。実験をおこなうためにGcm2-EGFPマウスをある程度繁殖させ、実験に使用できるかを確認し、副甲状腺特異的に細胞を可視化できることが明らかとなり、それにより甲状腺に埋没する副甲状腺の単離が可能になった。しかしながらシングルセルトランスクリプトーム用の1細胞への調整では、副甲状腺を解析用に1細胞にする方法を示した論文はまだなく、肝臓や膵臓で行われている方法を参考に細胞の調整を行っていたが、それらの方法ではタイトに結合組織に取り囲まれる副甲状腺の細胞をバラバラにすることが不可能であった。そこで、新たな副甲状腺の1細胞調整法の検証を行った。検証には時間がかかったが、効率よく細胞を調整することが可能になった。また、1匹あたりから得られる細胞数も明らかになり、現在は解析に必要な数の副甲状腺細胞を得るのに必要な数のマウスを準備し、それができ次第シングルセルトランスクリプトーム解析を行う予定である。 また実験を円滑に行うために今後の実験で使用するマウス(confettiマウス)を注文し、繁殖を行い、最終実験を行うための準備を整えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の中心であるシングルセルトランスクリプトーム解析に関して、それに必要なマウスが繁殖ができ次第、細胞を調整し、業者に委託して解析を行う予定である。この結果の解析には1-2ヶ月要すると考えられるが、その間に受精卵へ外部からBAC-CREベクターをエレクトロポレーションで導入し、簡便に目的とする遺伝子を発現する細胞のみを可視化し解析することが可能かを検証する。この検証によりシングルセルトランスクリプトーム解析の結果からすぐに目的とするPMCs候補細胞を可視化し、見つけることが可能となる。 また、別実験でPMCsを同定する方法として、confettiマウスとTm-Creマウス、Gcm2KOマウスを使い、時期特異的な増殖細胞の変遷を詳細に観察する計画を立てている。この方法でもPMCsの役割を果たす細胞がどのような場所に多く分布しているのかを特定することが可能であると思われる。 これらの実験により、本研究課題であるPMCsがどのような細胞であるのかを明らかにできると考えている。
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Causes of Carryover |
シングルセルトランスクリプトーム解析に必要な細胞の調整に時間を有したため、その委託がまだできていないことが次年度使用額が生じた理由である。すでに業者には細胞調整ができ次第委託を行うことを連絡しており、また、細胞調整もマウスの数が整い次第行うことから、次年度のはじめにシングルセルトランスクリプトーム解析を委託して、予算を使うことが決まっている。
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Research Products
(1 results)