2023 Fiscal Year Annual Research Report
こころの性とその多様性を生み出す神経基盤の解明を目指した性的二型核の解析
Project/Area Number |
20K07257
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
塚原 伸治 埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (90318824)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 性的二型核 / 性行動 / 性ホルモン / アンドロゲン / 性分化 / カルビンディン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、マウスの視索前野と分界条床核に存在する性的二型核に着目し、性的二型核を構成するカルビンディン(CB)ニューロンの社会行動における役割とCBニューロンの性差構築機構を明らかにすることを目的とした。神経活性マーカーであるfos発現を指標にして、社会行動を起こした雌雄マウスのCBニューロンの神経活性を調べた。その結果、性行動を起こした雄マウスでは視索前野のCBニューロンの約半数がfosを発現した。また、fosを発現するCBニューロンは、性行動や攻撃行動を起こした雄マウスや性行動や養育行動を起こした雌マウスの分界条床核にも観察された。このことから、CBニューロンが社会行動の制御に関与することが示唆された。次に、各種AAVベクターとCBニューロン特異的にCreリコンビナーゼを発現するトランスジェニックマウスを用いて、CBニューロンの社会行動制御における役割や同ニューロンの解剖学的特徴を明らかにするための解析を行った。その結果、分界条床核のCBニューロンを欠如した雄マウスは、雄に対する攻撃性が低下し、代わりに雄に対して交尾行動を起こすことが分かった。さらに、分界条床核のCBニューロンはGABA作動性介在ニューロンであることが明らかになった。加えて、視索前野には雄特異的CBニューロンが存在することも明らかになった。同ニューロンは、GABAを神経伝達物質として産生し、中脳腹側被蓋野へ軸索を伸長させ、中脳腹側被蓋野のドーパミン神経系に影響を及ぼすことで性的動機づけ行動を調節することが明らかになった。また、性行動の発現制御において、CBニューロンに発現するCB自体にも役割があることが分かった。最後に、視索前野の雄特異的CBニューロンに対する性ホルモンの役割を解析した結果、その出現には新生仔期および春機発動期の精巣から分泌されるアンドロゲンの作用が不可欠であることが明らかになった。
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