2022 Fiscal Year Research-status Report
Spatial and temporal analysis of voltage-sensing phosphatase activity in sperm
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20K07274
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
河合 喬文 大阪大学, 大学院医学系研究科, 助教 (70614915)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 精子 / VSP |
Outline of Annual Research Achievements |
電位依存性ホスファターゼVSPは、膜電位の感知に重要である電位センサードメインを有するにも関わらず通常の電位依存性イオンチャネルとは異なってイオンチャネル活性を示さず、代わりに電位依存性酵素活性(ホスファターゼ活性)を示すという興味深い分子である。VSPは精子特異的に発現していることが知られていたが、これまでに私は成熟した精子を用い、VSPが受精時の運動性制御に関わることを明らかにしてきた。しかしVSPによる精子における活性をどのように形作られるのかについて、その時空間的な情報は不足していた。一方前年度までに、VSPの活性が精子の成熟と密接な関わりを持つことを明らかにしていた。また、これまでにマウスのVSPについてはin vitroでの検証が不可能だったことからその正確な特性についての知見がなかったが、前年度までにこの問題を克服することにも成功していた。 そこで、本年度は上記のアドバンテージを持って、VSPのもつ電位依存性について詳細を調べようと考えた。まず上記のin vitroの系を用いて、電位依存性がシフトする条件を見出しその情報に基づいて点変異マウスを作製した。そのマウスを解析した結果、驚いたことにイノシトールリン脂質のレベルが精子の成熟過程に関係なく変化していなかった。この結果からVSPが精子においてはin vitroとは異なる何らかの特殊な制御を受けている可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
上記にも記した通り、驚いたことにVSPの電位依存性を50mVほどシフトさせたにも関わらずそのマウスにおいてイノシトールリン脂質のレベルは野生型のものとは変わらなかった。すなわち、VSPが精子の鞭毛膜においてはin vitroとは異なる何らかの特殊な制御を受けている可能性が考えられる。実際に精子特異的なK+チャネルSlo3ではその電位依存性がin vitroと比べて遥かに左側にシフト、すなわちチャネルが開きやすくなっていることが明らかになっており、同様のメカニズムがVSPにおいても働いている可能性が考えられる。その理由について、Slo3については一部、補助サブユニットの存在が重要であるとされているが、その他にも膜の性質などがこの制御に関わっている可能性が考えられている。したがってVSPについても補助サブユニットや精子鞭毛膜の性質がその電位依存性の大きなシフトをもたらしている可能性も考えられ、これまで予期していなかった制御機構の発見に繋がることも期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
上述した通り、私はすでにマウスのVSPを用いてアフリカツメガエル卵母細胞を用いたin vitroでの二本差し膜電位固定法を用いることで、その機能を検証できる系を確立している。そこため、この系を用いて引き続き新たな点変異実験をおこなっていくことにより、電位依存性を完全に消失させてしまう条件や、或いはVSPの電位センサーと酵素ドメインのカップリング機能に大きな影響を与える変異条件を同定する。 そしてこの情報を基に、新たな点変異マウスを作製する。次に、これらのマウスを交配してホモマウスを得た後、その精子におけるVSP機能を解析することでどの程度VSPの分子機能が影響を受けているのか、より具体的に明らかにする。またこの他にも、精子鞭毛特有のVSP補助サブユニットや脂質条件の変化に着目し、何故精子においてはVSPの電位依存性が大きく変化しているのか、その分子的メカニズムに迫った研究を展開していきたいと考えている。
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Causes of Carryover |
新たな点変異マウスの作製とその解析に費用が必要であったが、その解析に間に合わわせることができなかったため。
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[Journal Article] Insight into the function of a unique voltage-sensor protein (TMEM266) and its short form in mouse cerebellum2022
Author(s)
Kawai T*, Narita H, Konno K, Akter S, Andriani R, Iwasaki H, Nishikawa S, Yokoi N, Fukata Y, Fukata M, Wiriyasermkul P, Kongpracha P, Nagamori S, Takao K, Miyakawa T, Abe M, Sakimura K, Watanabe M, Nakagawa A, Okamura Y (* corresponding author)
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Journal Title
Biochem J
Volume: 479(11)
Pages: 1127-1145
DOI
Peer Reviewed
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