2022 Fiscal Year Research-status Report
新規冷受容分子TREKと女性ホルモンに着目した女性の冷えのメカニズムの解明
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20K07275
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Research Institution | Showa University |
Principal Investigator |
内田 有希 昭和大学, 医学部, 助教 (50634002)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 女性ホルモン / TREK2 / TREK1 / 冷え症 / 寒冷応答 |
Outline of Annual Research Achievements |
【研究計画】現在まで、申請者は女性ホルモンのエストラジオール(E2)の冷受容分子TRPM8, TRPA1への影響を雌ラットと若年女性において明らかにしてきた。本研究では新たな冷受容分子TREKに着目した。(実験1)E2のTREK1, 2を介した体温調節反応への影響を調べる。卵巣摘出しE2を消失した雌ラット、外科的にE2を投与した雌ラットを用い、TREK1, 2作動薬(オスタルチン)を投与し、体温調節反応を無麻酔・非拘束下で計測し、生体サンプルを取得する。(実験2)同様の方法で女性ホルモンのプロゲステロン(P)のTREK1, 2を介した体温調節反応への影響を調べる。【研究成果】(実験1)E2投与群でオスタルチン投与は体温を上昇させた。オスタルチン投与群でE2投与群はE2非投与群より体温が高かった。オスタルチンは尾部皮膚温を低下させ、E2は尾部皮膚温を低下させる傾向がみられた。E2は甲状腺ホルモンT3を上昇させた。活動量、酸素消費量、尾隠し行動、血中カテコラミン、甲状腺ホルモンT4は群間差がなかった(各群9匹ずつ計36匹)。よって、E2はTREKを介し体温を上昇させることが示唆された。(実験2)P投与の有無に関わらず、オスタルチン投与は体温を上昇させた。オスタルチンは活動量を上昇させる傾向がみられた。Pは血中ドーパミン濃度を低下させた。尾部皮膚温、体温調節行動、血中アドレナリン、ノルアドレナリン、甲状腺ホルモン濃度は群間差がなかった(各群8匹ずつ計32匹)。よって、オスタルチンは体温を上昇させるが、PはTREKを介した体温調節に影響しないことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(実験1)計測した生理データの結果を解析した所、全身性の代謝計測の必要性が出てきた。よって、呼気ガスモニターを導入し、全身性の代謝計測を追加で行い、より充実したデータ収集を実現できた為。(実験2)雌ラットにおけるプロゲステロンのTREKを介した体温調節への影響について、実験を完了した為。研究成果は第100回日本生理学会大会で発表し、国際学術雑誌Steroidsに投稿中である。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度実施分の動物倫理審査は承認された為、問題なく実験を継続することができる。(実験1)採取した脳は免疫組織化学法を用い、神経活性マーカーで活性部位を調べる。脊髄は脊髄神経節のTREK1、2のmRNAレベルをRT-PCR法にて計測する。mRNAで差が認められた場合は、ウェスタンブロット法で蛋白質を計測する。(実験2)実験結果は国際学術雑誌Steroidsに投稿中である。結果を待ち、リバイスや再投稿を行う。実験1でE2のTREKを介した体温調節への影響が認められた為、人を対象に予備実験として実験1で使用したオスタルチン溶液の手背への皮膚塗布を行った(男性1名、女性1名、計2名)。しかし、オスタルチン溶液塗布時、寒冷感覚、寒冷不快感は申告されなかった。今後、予備実験の被験者数を増やし、本実験を行うか検討する予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス流行の影響で学会がオンライン開催に変更となった為、旅費の使用が予定より減少した為、差額が生じた。翌年度の助成金と合算し、薬品、実験動物等の実験消耗品の購入に充てる計画である。
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