2020 Fiscal Year Research-status Report
Mechanisms for extracellular electrolyte-dependent regulation of ion channel expression
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20K07277
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
小野 克重 大分大学, 医学部, 教授 (40253778)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | Kir2.1チャネル / IK1チャネル / 細胞外カリウム / 転写 |
Outline of Annual Research Achievements |
電解質異常は様々な原因によって生じ、主に神経や筋という興奮性細胞の機能を損なう。例えば、高カリウム血症では知覚過敏筋力低下という神経・筋症状の他、不整脈や心停止等の重症循環器症状を呈する。このような症状の多くは細胞内外のK+濃度差の減少と細胞外K+の作用によるK+チャネルのイオン透過性(コンダクタンス)の上昇によるものと考えられてきた。しかしながら、本研究の予備実験成果によると、細胞外K+はイオンチャネルの発現そのものを制御し、細胞の長期環境順化の1つの対応機序として作用する可能性が示唆されている。このような細胞適応の概念はこれまで報告されたことがなく、新規のイオン制御機構であると考えられる。これらの予備検討では細胞外K+がK+チャネル発現を制御する可能性が示された。細胞内カルシウムイオン(Ca2+)はセカンド・メッセンジャーとしてシグナル伝達に深く関わるが、その他の電解質、例えば生体に多く存在するナトリウム(Na+)やマグネシウム(Mg2+)という陽イオンが長期的にイオンチャネルの発現を制御する可能性があると我々は考えている。よって、細胞外K+がK+チャネル(これまでの成果ではKir2.1チャネル)の発現を正に調節するとう現象を手がかりに、細胞内外のイオンがイオンチャネルの発現、特に転写過程を制御するという、「電解質が電解質制御に直接関与する」という新規概念の確立を目指す。具体的には、細胞外K+が何らかの機序でKCNJ2蛋白を増加させる働きがあることを示したい。特にK+結合蛋白(Kbp, YgaU他)の関与に注目している。KCNJ2蛋白の増加は同mRNAの増加を伴っており、KCNJ2チャネルの転写過程が細胞外K+によって制御されると考えられる。我々は、この細胞機能制御現象を「電解質 - 転写連関と呼ぶが、この概念の確立を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
イオンチャネルは細胞内外のイオン濃度差を関知し細胞膜を横切るイオン流を制御して細胞の恒常性を維持する。その一方、イオン濃度勾配がイオンチャネルの数を変化させるような仕組みは存在しない。しかしながら、イオンチャネルは単にゲーティングを介して細胞内外のイオン環境を保つだけでなく、チャネルの数そのものを変化させ、環境の変化に対応している可能性が示すデータを得た。すなわち、ラット心室筋を単離し培養する際に培養液のカリウム(K+)濃度を変化させて24時間後にKCNJ2 (Kir2.1)チャネルのmRNAの発現を評価した。細胞外K+濃度が高いほど、KCNJ2チャネルの発現が増え、その結果、外向き電流の大きさが変化する可能性を示すものである。細胞外K+濃度を上昇させるとIK1チャネルのコンダクタンスが増し、外向き電流は増大することが知られているが、イオンチャネルの発現そのものが変化することを示した報告はないため、本研究は新知見である。更に、更に検討を進め細胞外K+の増加がKCNJ2チャネル蛋白質を増やすか否かを今後、検討を加えていきたい。本結果の一部は、以下の論文で2021年に報告した。 WangP, Zhu X, Wei M, Liu Y, Yoshimura K, Zheng M, Liu G, Kume S, Kurokawa T, OnoK Disruptionof asparagine-linked glycosylation to rescue and alter gating of theNav1.5-Na+ channel Heartand Vessels 36: 589-596, 2021
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Strategy for Future Research Activity |
細胞外のK+濃度が高い環境で細胞を培養するとKCNJ2チャネルのmRNAや蛋白の発現が増加し、かつイオンチャネルとして機能してIK1電流が増加することが確認された。この実験結果をこれまでのデータと併せて考察すると、細胞外K+が現象(結果)としてKCNJ2チャネルの機能的発現を増加することが示されたが、その分子機序は明らかではない。細胞外環境を、高Na+、高K+、高Mg2+、 高Clとしてラット心筋細胞を培養してDNA Arrayを用いて網羅的に全遺伝子の発現動向を解析する。In Silico 解析によって目的チャネルの転写に関わる可能性のある転写因子と転写補助因子を同定し、luciferase assayで作用を確認する。確定転写因子を心筋細胞(ラット、ヒト心房筋)とHEK 293細胞に導入し、心筋細胞と異種発現系の両方で目的イオンチャネル、転写因子、及びカリウム結合蛋白(Kbp, YgaU他)の発現が変化するかを電解質異常細胞培養液の元で確認し、機能異常をパッチクランプ法他で確認することを目標としている。
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Causes of Carryover |
旅費の一部は学会がweb開催される等の理由により来年度に持ち越す予定である。
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