2022 Fiscal Year Research-status Report
透過イオンの「流れ」に依存するチャネルブロックの分子内機構の解明
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20K07283
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Research Institution | Kurume University |
Principal Investigator |
柳 圭子 (石原圭子) 久留米大学, 医学部, 准教授 (70265990)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | イオンチャネル / カリウムチャネル / 内向き整流性 / 電位依存性ブロック / pH / プロトン |
Outline of Annual Research Achievements |
内向き整流性カリウムイオン(K+)チャネルの活性化(開口)は細胞膜内外のK+の電気化学ポテンシャル勾配に依存するため、このチャネルはあたかもダイオードのように常に一方向にしか電流(K+)を通さない(強い内向き整流性)。チャネルの活性化―脱活性化は細胞内に存在する有機分子であるポリアミンやMg2+などの多価陽イオンによるチャネル孔のブロックとその開放を反映すると考えられるが、これがK+の電気化学ポテンシャル勾配に依存するメカニズムはよく分かっていない。本研究事業においてわれわれはすでに多価陽イオンによって生じる急峻な電位依存性を示す時間依存性ブロックは細胞内K+によって駆動され、一価陽イオンのNa+やLi+よって瞬時に生じる緩やかな電位依存性を示すブロックは細胞内K+と競合することを見出した。さらに令和4年度は新たに細胞内の水素イオン(H+;pH)の作用を詳細に解析して、細胞内液を酸性化させるとH+が極めて遅い時間経過で急峻な電位依存性をもってチャネルをブロックすることを見出した。チャネルの大きな細胞質領域内面にある負電荷を除去する変異によってH+の作用は強くなったが、細胞膜領域の中心腔にある負電荷を除去する変異によってH+によるブロックは生じなくなったことから、H+は細胞質領域のK+と競合しつつ細胞内液側から中心腔に侵入し、そこにある負電荷との静電的作用によってK+の流れをブロックすると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和4年度の途中まではポリアミン分子が有する炭化水素鎖とチャネルとの相互作用を調べる目的でビスアミンやモノアミンを用いた実験を行っていたが、これらの分子は空気中の二酸化炭素と反応して劣化するために実験が思うように進まなかった。一方で細胞内H+の作用に関して得られた知見は同じく一価の陽イオンであるNa+やLi+を用いた実験から得た結果とは異なっており、ポリアミン分子における炭化水素鎖とチャネル内面との疎水的相互作用無しにNa+やLi+よりもさらに小さなH+がチャネルの奥深く侵入して強い内向き整流性を引き起こし得ることが明らかになった。
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Strategy for Future Research Activity |
令和4年度に細胞内H+の作用を解析して得られた知見は、同じく一価の陽イオンであるNa+やLi+を用いた実験から得た結果とは異なっており、Na+やLi+よりもさらに小さなH+がチャネルの奥深く侵入して強い内向き整流性を引き起こし得ることが明らかになった。さらなるチャネルブロックのメカニズムの解明にはH+自身の電気化学ポテンシャル勾配の関与やH+とK+の競合に関して実験を追加する必要が出てきた。
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Causes of Carryover |
本研究事業の初年度において、老朽化しているパッチクランプ増幅器(Axoclamp200B)の買い替えを希望していたが、当該機器が高額(2020年4月の時点で値上がりして320万円)となり全交付額(330万円)に占める割合が高すぎるために購入を断念せざるを得なくなり余剰が生じた。本年度(令和5年度)はこれまで同様、データ解析に必要なソフトウエアの更新や、細胞培養や電気生理学実験に必要な消耗品に加えて、論文投稿のための英文校閲や投稿費用などに研究費を使用する予定である。
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