2020 Fiscal Year Research-status Report
社会ストレスによる樹状突起委縮を担う分子機序の解明とその制御法の確立
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20K07288
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
永井 裕崇 神戸大学, 医学研究科, 助教 (30814587)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 社会ストレス / マウス / 樹状突起 / ミトコンドリア |
Outline of Annual Research Achievements |
社会や環境より受ける過度のストレスは内側前頭前皮質神経細胞の樹状突起萎縮を組織学的基盤とした認知情動変容を招く。しかし、樹状突起萎縮の分子細胞生物学的な機序は殆ど分かっていない。本研究では、マウスうつ病モデルである社会挫折ストレスモデルを用いて樹状突起萎縮を導く機序を解明することを目的とする。今年度は、樹状突起形態変化と関連する細胞内構造変化を明らかにするために三次元電子顕微鏡及び超解像イメージングを用いストレス後の前頭前皮質を観察した。その結果、慢性ストレス後には錐体神経細胞の樹状突起全長が短縮し樹状突起分枝が少なくなること、及び個々の分枝長は変わらないことを見出した。またミトコンドリアの長径が短くなり、樹状突起内におけるミトコンドリアの数が増えること、すなわちミトコンドリアが過剰分裂状態を呈することが分かった。ミトコンドリアの過剰分裂は酸化ストレスや細胞死シグナリングとの関連性が深い。そのためこれらの知見は慢性ストレスがミトコンドリアの細胞死シグナリングを介して樹状突起分枝の欠失を招く可能性を示唆する。また、脳内代謝変化を明らかにするためにメタボロミクス解析を実施したところ、慢性ストレスにより解糖系、クエン酸回路など中央代謝系及びその分岐路であるペントースリン酸回路やヘキソサミン経路に関連する代謝物質が変動することが明らかとなった。並行して実施したプロテオミクス解析により上述した代謝経路に関連する酵素の発現変動を見出しつつある。今後はこれらのマルチオミクス解析を統合し抽出した分子について薬理学的・分子生物学的な操作を実施し、樹状突起退縮を担う分子機序を明らかにする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は三次元電子顕微鏡や超解像イメージングを駆使し神経細胞の形態及び内部構造を解析すると共に、マルチオミクス解析を実施しストレスによる樹状突起形態変化を担う分子機序を抽出し、分子操作によりその意義を明らかにする。今年度はこれらの研究戦略の基盤となる技術の開発及び共同研究による遂行を行い、研究を進めるうえで中心となるようなデータを取得することが出来た。そのため研究計画はおおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
オミクス解析によって得られる大規模データについては、in silico解析手法を駆使して重要な分子及びシグナリング経路を絞り込む必要がある。今後はオミクス解析の専門家と協調連携しながらデータ解析手法を検討し、その妥当性を検証していく。さらに、抽出された分子の薬理学的及び分子生物学的な操作的介入を実施し、ストレスによる代謝変容やミトコンドリア、樹状突起形態変化に対する影響を調べる。また、ストレスによる認知情動変容に与える影響も調べる。さらに、樹状突起の形態的萎縮はシナプス構造の萎縮と関連する。そのためシナプトソーム分画における分子変化についても調べる。
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Causes of Carryover |
研究の実施に伴い、計画の細部に関して見直しを図ることによって本年度のコストを抑えることが出来た。また、次年度に必要な消耗品量などの詳細は実施するまで未知の部分があるため、次年度使用額として計上した。使用計画に関しては、当初の研究計画に準じて遂行する。
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Research Products
(10 results)