2022 Fiscal Year Annual Research Report
細胞性粘菌分化誘導因子DIF-1のがん転移抑制機構の解明
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20K07292
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Research Institution | University of Occupational and Environmental Health, Japan |
Principal Investigator |
有岡 将基 産業医科大学, 医学部, 講師 (20733554)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | cell adhesion / DIF-1 / metastasis / mTORC1 / S6 kinase / VCAM-1 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々はこれまでに、Dictyostelium discoideumから同定された化合物である分化誘導因子-1(DIF-1)が、様々な哺乳類がん細胞の細胞増殖や細胞運動(遊走・浸潤)を抑制することで抗がん作用を示すことを報告している。さらに、DIF-1は腫瘍細胞接種による肺のコロニー形成を抑制することから、抗転移作用も発揮することが示唆されている。しかし、抗転移作用のメカニズムは不明なままである。そこで、我々は、in vitroおよびin vivoシステムを用いて、循環腫瘍細胞の血管への接着に着目し、DIF-1の抗転移作用のメカニズムの解明を試みました。その結果、尾静脈からがん細胞を接種する前にDIF-1を胃内投与すると、マウス肺転移モデルの肺コロニー形成が抑制され、DIF-1はがん細胞(メラノーマおよび大腸がん細胞)のヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)への接着を有意に阻害することがわかった。DIF-1は、がん細胞の接着関連タンパク質の発現量には影響を与えなかったが、mTORC1-p70 S6キナーゼシグナル抑制を介したタンパク質翻訳抑制により、HUVECの血管細胞接着分子-1(VCAM-1)の発現量を有意に低下させた。機序は明らかではないが、DIF-1はHUVECのVCAM-1だけでなく、接着分子のE-selectinの発現も抑制した。これらのデータから、DIF-1は、抗転移性を有する抗がん剤開発のためのリード化合物として期待されることが示唆された。
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